それ以外にも、水資源が不足するリスク、極端な気候現象により電力、水供給などのインフラ設備が危険にさらされるリスクも指摘されている。食物、水、インフラなどは我々の生活に大きな影響を引き起こすことになる。地球温暖化、気候変動のリスクを引き起こしたのは、二酸化炭素を中心とする温室効果ガスだ。人類が使用しているエネルギーの82%は化石燃料であり、二酸化炭素排出量の多い石炭が最近はシェアを増やし30%近くに達している。
気候変動のリスクを減らすためには、石炭を中心とする化石燃料の使用量を抑制することが欠かせないが、可能だろうか。
途上国の優先課題は貧困リスク
世界のエネルギー消費量のなかで石炭がシェアを増やしている理由は、その価格競争力と供給の安定性にある。石炭は豪州、米国、カナダ、インドネシア、南アフリカ、ロシア、中国など地域、政治体制に偏りなく賦存し、生産と輸出が行われている。そのために価格も相対的に安い。
中国、インドなどの新興国はむろんのこと、先進国でもエネルギー安全保障の観点から発電用を中心に石炭の消費は増加している。短中期には、石炭を中心とした化石燃料の消費を減らすことは不可能だろう。世界にはまだ電気がなく、料理に薪とか、軽油を使用している地区が多く残っているためだ。
例えば、東南アジア諸国の無電化率、と料理に薪を利用している人口の比率は表‐1の通りだが、やがて電気、ガスを使うようになるだろう。電気の供給は最貧国が貧困から抜け出すためには、不可欠だ。一方、電気料金を抑制する必要がある途上国では、発電の主体は燃料価格が相対的に安い石炭が多く利用される。アジア地区における発電源別のシェアは図-1の通りであり、40年まで常に石炭が過半のシェアを占め続けると見られている。