2024年12月22日(日)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年2月25日

 今年の日本経済は、消費税再引き上げのブレーキが先送りされる一方、円安、原油安、追加的財政金融政策といったアクセルが吹かされ、大きく回復するものと見込まれる。

 しかし、景気の好転で日本経済の課題が解消されることにはならない。緩やかなインフレ、企業収益と所得・消費の増加で特徴づけられる好循環経済の実現はまだ途上であるし、短期的な景気循環にも課題が残されている。

 それは、為替変動が大きく、輸出が安定しないことなどに起因する日本経済の殊の外大きなアップダウンである。

 日本経済を安定成長軌道に乗せるには、長期的には日本経済の体質を改善する構造改革が不可欠である。しかし、併せて大きな為替変動などを抑制して企業・家計が安定した投資・消費の伸びを実現できる経済環境づくりも欠かせない。

大きく回復する2015年の日本経済

 2015年の世界経済には、ドル高、原油安の大きな追い風が吹いている。堅調な景気拡大が続いて世界経済の中で一人勝ちしているアメリカ経済では、利上げ時期が近づいていることもあって、ドル高基調が鮮明になっている。

 原油安でも、アメリカのシェール革命の影響が大きい。中東などでの地政学的リスクの高止まりはあるものの、過去5年間の原油増産量がサウジアラビアの生産量の54%にも達したアメリカのシェール革命は、原油安の大きな要因となっている。現在の原油価格は、生産コストが割高なシェールオイルの増産を抑える水準にまで下落しているが、逆に豊富なシェールオイルの存在が原油高を抑えることにもなり、今後とも相対的な原油安が続くこととなろう。

 ドル高と原油安は日本経済の大きな支えとなる。円安と世界経済の回復は日本の輸出を下支えし、2015年を通じた円安効果による輸出数量の増加は、緩やかながらも3%程度が見込まれる。

 また、11年4-6月期以降、電力料金やガソリン代などエネルギー価格の上昇が個人消費を平均で0.8%ほど押し下げてきたが、原油安で下押しがなくなれば、それだけでGDPを年率0.5%ほど押し上げる計算となる(図表1)。

【図表1】日本:名目個人消費支出増減率の内訳
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