消費税再引き上げの1年半延期を契機として総選挙が行われたが、結果として消費税引き上げの先送りは大きな争点とはならなかった。
確かに、景気が減速する中、さらなる景気下押しにつながりかねない消費税の連続の引き上げが難しかったことはある。実際、財政健全化と景気は両立しにくいところがある。過去20年の間にOECD各国でもっとも財政健全化が進んだ時期は、景気が相対的に下振れしている(図表1)。
しかし、消費税引き上げを景気との関連だけで判断することはできない。消費税引き上げを迫られた主因が社会保障費増大にあり、消費税が社会福祉目的税と位置付けられていることからしても、これからの日本で福祉水準と負担をどうバランスさせるかの視点を欠くことはできない。
日本は低福祉に向かっている
日本は、OECD諸国の中でも税と社会保障負担が少ない国のひとつとなっている。図表2で明らかなように、日本の国民負担率(国民所得に対する税と社会保障負担合計の割合)はOECD33カ国中26位と相対的に低い。
一方、福祉水準は年金制度や国民皆保険制度などが導入されていて相応に充実しており、日本はいわゆる中福祉低負担国ということになる。OECD各国の社会保障支出の対GDP比を見ても、日本の社会保障支出度合は加盟国34カ国中で14位と中位にある。