2024年6月16日(日)

「ひととき」特別企画

2015年4月3日

 無数の燈籠が吊るされた拝殿に、「お大師様への朝ご飯」を供える無言の行ののち、チャッ、チャッと数珠をすり、仏器を鳴らす。そして、約一時間の勤行が始まった。理趣経(りしゅきょう)の読教が響く中、白々と夜が明けて、拝殿の向こうから御廟の姿が現れる。鳥がさえずり、世の中が目覚めていく。

まだ明けやらぬ早朝6時、「お大師様への朝ご飯」が運ばれていく

 外に出ると、参拝の人々の姿があった。「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱え、合掌する。遍照金剛は空海の灌頂名(かんじょうめい)で大日如来の別名だ。ふと思う。高野山は二面性を持つのではなく、両界曼荼羅のごとくあり、その中心に弘法大師・空海がいるのだと。

 御廟からの帰り道、約2キロの参道は、供養塔や杉木立が朝日に照らされ、清々しい。寒さもだいぶ和らいできた。

 もうまもなく参道も終わるかと思う場所で、西山さんは立ち止まり、五輪塔を見上げる。

 「この五輪塔は、下から地水火風空という、宇宙を構成する五要素、密教の言葉で言えば五大を表しています。空海は、五大にみな響きあり、と言いました。それは世界中のすべては響き合っている、という意味です」

 あらゆるものが響き、響き合い、この世界にあるという真理。奇蹟の森の奥之院では、その言葉の意味を直感できている気がする。


新着記事

»もっと見る