世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月31日

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 新国防長官は、これらの考えを、議会に提出する海洋安全保障・地域戦略報告書に含めるべきである。国防長官にとって、これからの2年は、短期的な危機への対応だけではなく、より長期的政策を形成する極めて重要な機会となる、と述べています。

出典:Patrick Cronin, Van Jackson & Alexander Sullivan ‘Note to Ash Carter: Make the Rebalance a Reality’ (Real Clear Defense; February 25, 2015)
http://www.realcleardefense.com/articles/2015/02/25/note_to_ash_carter_make_the_rebalance_a_reality_107665.html

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 この共同記事の第1の提言は、北朝鮮がゆくゆくは報復能力を持った核戦力を保有する可能性があるとして、「限定戦争シナリオ」を作って、対北朝鮮抑止力と即応体制を確立すべきだとします。つまり、北朝鮮の核開発進展と時間の経過により、北朝鮮の核と「同居」しなければならない事態に向かって動いていることを想定しています。軍事専門家としては当然の想定だと思われます。なお、著者のひとりであるバン・ジャクソンは、2月25日、書面による議会証言で、北朝鮮は今や「事実上の核保有国」であると述べたと報じられています。

 第2の提言では、同盟国(日豪韓比)や友邦国(インドネシア、インド等)の軍事力を高めるようにすべきだとします。著者は、同盟国等の軍事力整備に当たっては、相互運用性の確保が必要との趣旨を述べるとともに、軍事力増大の過程で高まる誤解や計算間違いによる衝突を回避すべきとします。また、同盟国は海底機雷設置等の防御的な能力を志向すべきとしますが、攻撃能力は米国が担当するということでしょう。この点は、注目されます。

 更に、日本の役割に言及し、日本と引き続き緊密に連携、協力していくべきだとします。日本にとっては歓迎すべき提言で、新長官との協力を推進していくべきです。また、米国は、日本とアジアの関係国との防衛協力を含め、地域防衛協力を支援、リードしていくべきとします。従来のハブ・アンド・スポークという二国間の網にとどまらず、同盟国・友邦国の間での協力(日豪、日印など)を支持していくとの考え方は、先月発表の米国家安全保障戦略でも明示的に書かれているところです。

 第3の提言は、中国に関係します。中国の台頭は歓迎するが、中国の強圧行動は懸念されると述べた上で、中国との摩擦の低減に努力すべきとします。より具体的には、ミリタリー同志のエンゲージメントの強化と透明性の推進という2つのことに新国防長官は努めるべきだと言います。穏当な考え方です。国と国の関係は、如何に利害が対立しても、エンゲージしないことには、何も始まりませんし、関係の管理もできません。その意味で、日中間で海事メカニズムのための話し合いが進み始めていることは良いことです。「エンゲージメント」と「透明性」は、今の時代の国際関係の基本でもあります。

  
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