2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月26日

 次期米国防長官に指名されたアシュトン・カーターについて、在米インド人ジャーナリストのシーマ・シローヒー(Seema Sirohi)が、12月16日付Diplomat誌ウェブサイトにおいて、これまでのカーターの米印防衛協力への努力を紹介し、米印関係にとって期待が持てる、と述べています。

 すなわち、アシュトン・カーターは、米印関係を知悉しており、かつて両国関係をうまく取り扱ったことがあるとして、インドで高い信頼を得ている。ワシントンにおいても、カーターは超党派の賞賛、支持を得ている。カーターが国防長官に就くことはインドにとり大きな朗報である。

 カーターは、2011年から2013年の国防副長官時代に、軍事貿易・技術提携計画(DTTI)を推進し、米印防衛関係を復活、活性化させた。2012年7月に、カーターはインド側高官と、米印防衛関係を、単なる売り手と買い手の関係から次の段階に進めるべく、意見交換を開始した。米側は、新しい計画を「防衛貿易計画」(Defense Trade Initiative)と呼んで、二国間軍事貿易の増大に焦点を当て、インド側は、「防衛技術計画」(Defense Technology Initiative)と呼んで、技術の移転とその国産化の目標を強調していたが、カーターは、両方をまとめてDTTIと呼ぶことにした。そのようにして、米国は、インドに公式の条約の締結を求めることなく、インドを重要技術についてのパートナーとして扱うことに同意した。

 カーターのリーダーシップの下、米国は、インドと共同開発、共同生産する10の技術プロジェクトのリストを提示したが、インド側はまだ検討段階にとどまっている。国防長官として、カーターは、米側の官僚組織だけではなく、インドの安保政策形成層にも働きかけることが期待される。米印原子力協定に関する彼の鋭い理解は、米国がインドに原子力責任法の制定を促し、交渉を結実させるのに役立つであろう。2006年、カーターは、「広範な戦略的再編」の先駆けとしての原子力協定に支持を表明し、米国の批判者は協定が引き起こし得るダメージを過大評価しており、不拡散体制に協定が与える悪影響は管理可能なものである、と述べた。その主張は、正しかったことが証明されている。

 ケリー国務長官が特にインド寄りではなく、パキスタン問題に熱心であるのに対し、カーターが対印関係を推進し得る人物であることは、インドから見て安心できる。問題は、インドの問題に立ち入る時間がカーターにあるかどうかである。彼は、ISIS、シリア、イラク、アフガンからの撤退といった緊急課題に対処しなければならない。インド側は、よく準備を整え、研究し、要望の最終リストを作っておくことにより、カーターの注意をより引きつけることができよう、と述べています。

出典:Seema Sirohi, ‘Ashton Carter Knows India Well’(Diplomat, December 16, 2014)
http://thediplomat.com/2014/12/ashton-carter-knows-india-well/

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 シローヒーは、ワシントンを拠点としているインド人ジャーナリストで、ジャワハルラール・ネルー大学で社会学を学び、カンザス大学にてジャーナリズムの修士号を取得、外交政策、特に米印関係を専門として、20年以上The Telegraphなどに記事を寄稿している人物です。また、2009年に設立されたインドの外交政策シンクタンク、Gateway Houseにも携わっているようです。


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