2024年7月16日(火)

対談

2015年4月14日

丸山:最低ですね(笑)。その矛盾はどう正当化しているんですか?

久松:「俺が社長だから」で済ませてしまう(笑)。この前も社内の飲み会で誰かが「あの案件はどうなったんですか?」とボソッと聞いてきて、「うーん、すごく率直に言うと、飽きた」って言ったら、伏見に真顔で「飽きたじゃなくて、やれよ」と怒られた(笑)。彼女は「どうせ飽きるんでしょ、と思うから、従いたくなくなっちゃうんです」って言ってて、まあ、そりゃあそうだよね、ごめんなさい(笑)。マネジメントとしては全然うまくいっていないです。「前しか見ない人間だから、先へ先へと行けるんだ」と無理矢理に正当化しています。

丸山:なるほど(笑)。

久松:でも「経営者を育てる」って全然わからなくて、育てるというより「見つける」じゃないかなあ。「ウチのやり方」は入り口としてネックになるから、あらゆるタイプの農業者なんて育てられるわけがない。僕らがいいと思う人を育てていいのであれば、チームにフィットする人を探すしかないけど、その資質を名指しすることはできないですね。わからないけど、「前にいたあの人に似てるよね」とか、なんとなくわかるレベルの資質はある。ある仕組みを作って何人もの人たちが通り過ぎていく過程で、選り分けができるようになるんだろうとは思います。まっさらな人を育てようとすると総花的になってしまうし、僕らのやり方に任せてくれるのなら、ある意味で贅沢に「選ぶ」しかないんです。それは行政には難しい話ですけど、三条市にはそういう考え方で人を受け入れてきた実績があるので、こちらもチャレンジだと考えてやってみようと思っていますね。

久松達央(ひさまつ・たつおう)
(株)久松農園 代表取締役。1970年茨城県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、帝人(株)入社。1998年農業研修を経て、独立就農。現在は7名のスタッフと共に年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売。SNSの活用や、栽培管理にクラウドを採り入れる様子は最新刊の『小さくて強い農業をつくる』(晶文社)に詳しい。自治体や小売店と連携し、補助金に頼らないで生き残れる小規模独立型の農業者の育成に力を入れている。他の著書に『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)がある。

丸山康司(まるやま・やすし)
名古屋大学大学院環境学研究科教授。専門は環境社会学、環境倫理、科学技術社会論。環境保全に伴う利害の齟齬や合意形成に関する研究テーマに関わっている。最新の著書は『再生可能エネルギーの社会化 社会的受容から問いなおす』(有斐閣)、共著多数。

取材協力:オークビレッジ柏の葉
都市に暮らす人たちに「食と農」のつながりを実感できる場所を提供するというコンセプトのもと、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅の目の前という立地で、体験型貸農園とレストランを展開。農園ウエディングやカルチャー教室から企業研修まで、開催されるイベントは多岐にわたる。農園のすぐ横で季節感に富んだ食材を楽しめるバーベキューも好評。
http://www.ov-k.jp

  
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