2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月23日

 スナイダーは、現下の韓国外交を「中級国家外交」と呼んでいます。米中の間で、また日中の間で、自らの国益と存在感を最大にすべく積極的に動こうとする外交です。盧武鉉大統領(2003~08)の時代には、「北東アジアバランサー論」と呼び、日米との関係を見直し中国との関係を強化しようとしましたが、基本的にはそれと同根の考え方で、韓国外交の底流に根強くある考えであると言えます。

 しかし、かかる考えは、状況によっては、無原則、非現実的な外交になります。外交は基本的に自分の力以上のことはできません。中国は韓国にミサイル防衛の配備をしないように求めるとともにAIIBの参加を求め、他方で、米国は韓国にミサイル防衛の配備を求めるとともにAIIBの不参加を求める状況で、韓国は苦悩してきました。英国等が参加決定したことでハードルが低くなり、AIIB参加を決定しました。これでTHAAD配備も認める可能性が高くなったかもしれませんが、そういうことになれば、結果的に、米中双方に不満と不信をもたらすことになるかもしれません。理論的にいえば、無原則なバランサー外交は同盟外交とは相容れないものです。

 韓国にとって問題なのは、この種の問題は今後も起こりうるということです。スナイダーもいう通り、今後、FTA政策についても同様のことが起こり、朝鮮半島の統一政策については一層難しいことになります。韓国は、安全保障は米国に依存し、経済は中国に依存しようとしているので、このままだとジレンマの構造はより強くなるでしょう。それに加えて、中国は、韓国に強烈な外交攻勢をかけています。

 しかし、韓国が北東アジアで過度にバランサー的な外交をすることは、当該地域を不安定化させます。中国に間違った信号を送るリスクもあります。日韓関係、米韓関係、日米韓関係を適正に運営していくことが、地域にとって、また、日本にとっても、特に韓国にとっても利益になることです。残念ながら、目下の韓国の一般的な考えはそういった志向ではなく、対日競争志向が大勢です。日韓関係を競争よりは協力の関係にし、その上で中国とも利益になる関係を発展できるようにする努力が望まれます。

  
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