世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年5月4日

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 30年戦争のその他の特色は、期間が長いこと、戦場となったドイツが荒廃したことです。30年戦争の結果、ドイツの人口は1800万人から700万人に激減したといいます。

 現在の中東の混乱が長引く可能性は高いです。混乱の一つの要因はISですが、ISとの戦いは長期にわたると見られています。また、最新の紛争であるイエメンについては、ハディ大統領を首都から追放したホーシー派はイエメン社会に深く根ざしたものであり、その排除は容易ではなく、長期にわたる混乱が予想されます。

 戦場となった地域の荒廃については、シリアはすでに国土の多くが荒廃し、ISの占領地域は、IS排除の戦闘が広がるにつれ、荒廃がさらに進むでしょう。

 以上の意味で、今の中東情勢を30年戦争になぞらえるのは示唆に富んでいます。

 紛争のライトモチーフになっているのが、サウジとイランの対立です。対立はスンニ対シーアの対立により、先鋭化されています。対立の構図において、押し気味なのがイランです。逆に、サウジは押され気味で、特に隣国のイエメンにまでイランの影響力が広がったことに危機感を抱いています。イランの核交渉で枠組み合意が成立したことは、イランの核開発に歯止めがかけられるという意味では、サウジにとっても朗報なはずですが、サウジは交渉を通じて米国がイラン寄りになったとして不快感を示し、警戒感を抱いています。もし本格合意が成立すれば、イランの国際的地位は向上し、サウジにとって打撃となるでしょう。

 中東の紛争のもうひとつの大きな攪乱要因であるISについても、脅威にさらされるのはサウジです。

 サウジはイランとの対立で、このように受け身に立たされることは甘受できず、今後エジプト、パキスタンなどと連携して何らかの巻き返しを図ろうとするでしょう。そのやり方によっては中東の情勢は一層混乱する恐れがあります。

 30年戦争は戦況が膠着状態になったため講和会議が開かれ、戦争が終結しましたが、それは戦争が始まって30年後のことです。今の中東は、ハースの言うように、そうした事態になる可能性もあり、先の見通しがなかなか立ちません。

  
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