記念式典は欠席でも
ロシアに気を遣ったフランス・ドイツ
ロシアは68の国や国際機関に記念式典の招待状を送ったものの、結局、欧米主要国や日本や韓国など、主要国の欠席が目立ち、出席は20カ国にとどまった。60周年の際には、日本を含む53カ国が参加したことを考えれば、ロシアの現在の国際的立場が如実に理解できる。しかも、この出席国、欠席国の有様は国際政治における友敵関係を如実に示しており、またプーチン自身も世界を友敵関係で俯瞰していることは間違いないだろう。
式典への出席者の中で、主賓であったのは、政治・経済両面で関係を深めている中国の習近平であり、「ファシズムと日本の軍国主義に勝利した」という歴史認識を共有し、多極的な新しい世界秩序を目指す中でも共闘している。加えて、キューバのカストロ国家評議会議長、中央アジアの首脳らが出席した。これらは言うまでもなく、いわゆる米国の「一極的世界」に反対し、「東西選択」において、ロシアを選択した国であり、ロシアが友好国と考えている国である。
式典においてプーチン大統領は「共に戦った米英仏国民らに感謝する」と述べた一方、軍事ブロックによらない世界の安全保障体制構築を訴え、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大をけん制した。習氏は 旧日本軍との戦争で「3500万人の死傷者」を出しながら「中国による不撓不屈の戦いにより、日本侵略者の大量な兵力を消滅させた」と主張し、対戦における多大な貢献をアピールすると共に、中露は大戦中に援助や戦闘で協力しあった「鮮血で固めた戦友」だと述べ、今後のさらなる関係強化の意欲を示した。
なお、プーチン・習両氏は式典前日の8日に首脳会談を行い、ともに第2次世界大戦の戦勝国として、歴史のわい曲を許さないという立場を再確認したほか、ロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」と、中国が陸と海に新たなシルクロードをつくる「一帯一路」構想を連携して進めることでも一致した。さらに、中露両国の投資財団がリース会社を設立し、中国とアジアという広大な市場でロシア製の旅客機スホーイ・スーパージェット100をプロモートする計画も発表された他、ロシア初となる高速鉄道計画「モスクワ–カザン高速鉄道」の建設を中国企業が受注し、中国側が3000 億ルーブルを投資し、2020年の開通が目指されることも約束された。
国連の潘基文事務総長は国連教育科学文化機関(ユネスコ)のボコバ事務局長と共に出席したものの、欧米主要国のほとんどの首脳が式典に欠席する中、フランスのファビウス外相は式典参加のためにロシアを訪問した。しかし、軍事パレードには出席しなかった。オランド大統領は出席しないながらも(欠席理由はキューバ訪問)、ロシアに敬意を表して閣僚級である外相は出席し、しかし軍事パレードには欠席というその対応から、フランスの対露関係への苦悩が見て取れる。このことは、両国間の最大の懸案となっているフランスがミストラル級艦の対露引き渡しペンディング問題とも深く関わっている。