このように、パキスタンは友好国、敵対国を共に怒らせるが、その国際的立場は見かけよりも強力であり、切り抜けるのも上手い、と報じています。
出典:Economist ‘Storm-tossed’(April 18-24, pp.25)
http://www.economist.com/news/asia/21648698-pakistans-all-weather-friendships-are-under-strain-storm-tossed
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パキスタンがサウジからのイエメン派兵要請を断ったのは苦渋の決断だったでしょう。パキスタンはこれまでサウジから多大の資金援助を受けてきました。
パキスタンの核開発はサウジの援助なしには考えられません。他方でパキスタンはイランと900キロの国境を接していて、イランがパキスタンの人口の20%を占めるシーア派をそそのかし、パキスタン内の宗派対立をあおることは避けなければなりません。そのうえパキスタン軍は宿敵インドに備えるため主力を東部インド国境に配備していますが、2009年以来タリバンの反乱軍と対峙すべく、実働部隊の3割を北西部に展開していて、サウジの要請に応える余裕はありません。パキスタンとしては、イエメンでサウジとイランの代理戦争に巻き込まれることは望まないでしょう。
サウジ有事の際はパキスタンが核を提供するという暗黙の了解がある、との話はよく聞きますが、吟味する必要があります。おそらく有事として想定されているのは、イランが核武装をするか、しそうな場合でしょうが、その場合でも、パキスタンが核兵器をサウジに渡すことは考えられません。
パキスタンの対外関係で最も重要なのは中国との関係です。両国を結ぶ強い絆は反インドであり、パキスタンの核開発に対する中国の支援です。パキスタンから見れば、中国からの武器供与や投資、中国から見れば、中国西部の重要性の高まり、タリバン対策などが両国の関係を深めており、中国のインドとの関係改善などがあっても、パキスタンと中国との関係は安泰であろうとのエコノミスト誌の評価は正しいのでしょう。パキスタンは同時に難しいインドや米国との関係改善に努めています。
パキスタンは地政学的に要衝の地にあって地域の動向に揉まれ、まさに嵐の中におり、しぶとい外交を展開せざるを得ないのです。
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