――なぜアメリカ(ワシントン)がPDの主戦場になるのか
佐藤:PDという発想自体が、民衆が政治に影響を与えなければ成り立たない。つまり、民主主義国、特にアメリカのものであり、商業主義的で、新自由主義と相性がいい。
特にアメリカ合衆国大統領は、世界大統領でもある。だから、アメリカの連邦議会の議員は、世界議会の議員であるわけだ。アメリカ国民でなければ、選挙権も被選挙権もないけれども、そうではない我々の生活に直接影響を与える人たちだから、そこを標的にするというのは、ある意味当たり前だ。
日本人でそれを今一番よくわかっているのは、翁長雄志沖縄県知事だ。沖縄県は東京と交渉するのではなく、アメリカに事務所をつくり、アメリカと交渉をして、アメリカの議会で仲間をつくること、人権問題を取り扱う国連総会第3委員会を通じて沖縄の状況を訴えるということで、全ての標的をアメリカにしている。やはり、アメリカの施政権下でアメリカ人と長く付き合っているから、アメリカ型民主主義の弱点がどこにあって、どこに突っ込むと小さい連中でも影響力を極大にできるかというのを知っているわけだ。
――日本にその「上手さは」無いのか
佐藤:日本は6つのマトリックス全てで一緒のことを言ってしまっている。これではお金をかけても無駄だ。
ただ、4月29日の安倍晋三首相の上下両院合同会議での演説はPDの手法を取り入れたものであったと言える。アメリカの一般民衆ではなく、日本について良く知らないアメリカの国会議員というB級エリートに対象を絞り、スタンディングオベーションの数やタイミングまで意識して、対象のアメリカ議員の心を打つように戦略的に考えられた演説だった。
――これまで日本に批判的であったアメリカメディアの論調は変わるか
佐藤:これだけでは変わらないし、今回の演説の効果には期限がある。9月に中国の習近平国家主席が訪米し、議会演説をすることになれば、彼らのほうが戦後70周年で言えることも多い。