2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月17日

 米・サウジ関係の緊張を高めている一番の要因は、イランの核交渉でしょう。

 核交渉は、サウジから見れば、米国が中東政策の軸足をイランに移しつつあることを意味します。核交渉がまとまれば、イランの地位と影響力が高まるのは明らかです。米国がひそかに期待しているように、核合意成立を受けてイランの対外姿勢がより協調的になったとしても、それがイランの地位の向上を意味する限り、サウジにとっては何の慰みにもなりません。イラン関連では米国はサウジへの安全保障上のコミットを再確認する以外に打つ手はありません。

 サウジにとっても、イランの核交渉などで米国に不満があるとはいえ、米国がサウジの安全保障の究極のよりどころである点は変わりありません。もっとも、イランの安全保障上の脅威と言っても、イランが直接サウジを攻撃することは考えられず、あるとすれば、イランがサウジ国内の不満分子を扇動することでしょう。このような事態で米国、特にオバマ政権が介入することは考えられず、サウジは米国に頼れません。米国がサウジの安全保障にコミットすると言っても、限度があります。

 シェールオイルの増産で、米国が以前ほど石油でサウジに頼らなくて済む、というのはその通りでしょう。だからといって、米国がサウジを重視しなくなるということにはなりません。サウジはスンニ派の盟主として、アラブ世界で確たる地位を誇っています。米国の中東政策にとって、サウジは依然として枢要の地位を占めます。

 論説はこれまでの米・サウジ関係は複雑な婚姻関係のようなものだと言っていますが、今後ますます複雑さを増すこととなるでしょう。

  
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