2024年11月22日(金)

メディアから読むロシア

2015年6月9日

私は、中国の友人たちに対し、彼らの成長する力をより広範な協力機構の中で統合することを考えるようアドバイスしたい。たとえばSCOの枠組みである。ここに一つの好例がある。コール首相時代のドイツは、強いベルリンが欧州を支配する懸念を軽減するために、自らを欧州統合へと参画させた。この戦略は20年にわたって機能し、それがドイツにもたらしたのは利益だけだった。

――ロシアには西側との正常な対話を再開する可能性は残っているのでしょうか? そのプロセスはロシアの東への接近を疎外することはないのでしょうか?

カラガノフ:全体としてヨーロッパとしてのアイデンティティを有するロシアにとっては、ヨーロッパからの離脱は、経済的、政治的、そして政治規範的な観点においてさえも不利益なものである。したがって、対話の可能性は探るべきだ。しかし、その可能性は、おそらく、より広範なユーラシアという文脈におけるものとなるだろう。思うに、我々はヨーロッパとの間で穏健に関係性を調整することとなろう。これは必要なことだ。米国との関係に関して言えば、今のところ正常化に対する非常に強い意欲があるようには見えない。これは反露的な感情がひどく盛り上がっている米国についてだけでなく、ロシア自身についてもそうだ。

――中国は活発に西欧、米国、世界のその他の地域の企業を買収しています。こうした経済的伸長を我々は警戒すべきでしょうか?

カラガノフ:一般的に言って、あなたのところにお金が投資されているなら、それは利益になる。だが、あなたの政府が弱く、自国の主権を守れないなら、それは脅威だ。中国には途方も無い余剰資本がある。こうした蓄積はすでに何兆という規模に達し、脆弱になっていることが分かっている。米国が自国の国債の価値を防衛することなどを目的として、いずれかの時点でドルを切り下げてくる可能性は否定できない。

現在、こうした可能性は検討されている。こうした場合には、中国は通貨だけでなく資産も取得しようとするだろう。彼らは世界中で住宅や企業を買収している。これは充分に合理的な考え方であり、それらは我々の利益のために用いられねばならない。繰り返しになるが、そのためには強力で効率的な政府が必要だ。中国の風が我々の帆に吹き付けることになろう。

これまでのロシアでは、残念ながらステレオタイプが存在してきた。すなわち、危険性ばかりに目が行って、可能性を見ようとしてこなかった。これは戦略的な誤りであるばかりか、思考の怠惰さの反映である。我々は偉大であらねばならないが、同時に強く、豊かでもなければならない。中国のような大きな隣人は、何よりも、ロシアに途方も無い可能性をもたらしてくれる。まずはそこから始めようではないか。

2つの「メガ・プロジェクト」の間には根本的な溝

 インタビューの後半でも、カラガノフ教授の発言には中国の強大な経済的パワーに対する警戒感が見て取れる。中国という巨大な隣人を「チャンス」と捉え、警戒するよりも可能性に目を向けようと言いつつ、中国に対してはドイツを見習えとたしなめているのはその端的な現れであろう。


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