2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月8日

 この5月7日付の英フィナンシャル・タイムズ紙の記事は、ロシアでの戦勝記念日への習近平国家主席の参加に因み、現在の中ロ関係を簡潔にスケッチしたものです。中ロ間には根深い猜疑心、中央アジアにおける勢力争い等もあるので、両国の接近に過度に神経質になる必要はないが、他方両国をいたずらに煽って接近を助長することのないよう、気を付けなければならないとするものです。中道を行く、現実的な論説と言えます。論旨は、以下の通りです。

画像:iStock

 すなわち、5月9日、モスクワでの戦勝記念日に西側首脳が欠席する中、習近平主席の参加はロシアを大きく助ける。他方、中国共産党も歴史問題をナショナリズムの道具として使っているし、ロシアはエネルギー資源輸入源として中国にとっても重要である。

 しかしプーチンは、中国は甘いパートナーではないことを知っているに違いない。石油・天然ガス輸出案件にしても、中国の国営企業は基本合意はしても価格や利子の支払いをめぐって厳しい交渉を展開する。

 中ロ両国は戦略的利害を共にするとともに、相反する利害を抱えている側面もある。中国が「一帯一路」の名の下に西進政策を掲げているのに対して、ロシアはシベリア及び自分の勢力範囲と見なす中央アジアへの、中国の浸透を警戒している。

 西側は、対ロ制裁等によって、中ロ接近を助長してしまったのではないかと、過度に気をもむ必要はないだろう。ロシアは中国に接近しても下位のパートナーである屈辱をなめることになるし、また中ロ両国の間には求心力と斥力の双方が同時に作用しているからである。

 但し、中ロ両国は西側による民主主義の伝道とも言えるものに猜疑心を持っており、手を携えて相互の立場を強めようとするので、西側は敵意を不必要に煽って両国を一層接近させてしまわないよう気を付けるべきである、と論じています。

出典:Financial Times ‘Putin and Xi: not quite the allies they seem‘(May 7, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/cd637c7e-f4a8-11e4-8a42-00144feab7de.html#axzz3ZnE5BTc4

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 ロシアの戦勝記念日に習近平主席が出席したことで世界は大騒ぎしているが、中ロ提携は以前からある話です。両国は実は互いにとって最大の脅威であり、これを脅威でなくすために、また米国による干渉に対抗して国内の支配体制を守るために、提携しているのです。


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