前回の小覧では、中露接近に関して、ロシアの代表的な国際政治学者である高等経済学院のカラガノフ教授のインタビュー前半を取り上げた。中国への脅威感を打ち消しながらも、いかにして中露の対等性を確保するかがロシア側の大きな関心事である、というのが前回の結論である。
なかでもロシアが大きな期待を掛けているのは、中国との関係性に難を抱えた諸国との関係強化による多角化戦略である。そこで今回は、こうした多角化戦略の一環として、ロシアが中国とともに加盟する2つの国際機構、すなわち上海協力機構(SCO)とBRICSを軸にロシアの多角化戦略をカラガノフ教授がどのように説明しているのかを見て行きたい。
「ドイツという好例がある」
――ロシアは中国とともに上海協力機構(SCO)やBRICSといった国際機構に加盟しています。中国がこれらの機構を支配する危険性はないのでしょうか?
カラガノフ:SCOやBRICSの思想はかなりの程度、それらが対等な国々による同盟及び連合であることを指向している。中国が強大な能力を有し、経済の観点からその他の国々を上回っていることは事実である。しかし、そこにおいて、各国は完全に自律的な道を歩んでいる。それらは成功している。というのも、各国がそこで団結することでさらなる政治力を得ているのであり、そこで得られる資源に閉じ込められているわけではないからだ。
BRICSにおける各国の利害対立について言えば、これは粛々と解決されている。さらに言えば、たとえばBRICSにすでに存在するメカニズムにより、中印の指導者はますます頻繁に会合するようになっている。我々は今日、中印間が諸問題について話し合いを持つという喜ばしい傾向を目にしている。両国には常に競合関係があり、これは事実であるが、その対立や相違は減少しつつある。
SCOでは何が起こっているか見てみよう。今後の数カ月から数年の間に、上海協力機構が新たなコミュニティ、すなわち大ユーラシアの中心となることも排除されない。しかしそのためには、SCOに具体的な計画と具体的な協力を積ませることを含め、少なからぬ方途が必要とされる。