2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月25日

 さらに、水資源の覇権国である中国は、国境をまたぐ川の水文学上のデータをインドに売るとの合意も断った。中国は、近隣国と水を共同使用する合意のみならず、河川についてのデータを共有することすら拒否している。

 モディ訪中での共同声明で、中国は、インドの原子力供給グループ入りへの熱望に留意し、インドが安保理を含む国連でより大きな役割を果たしたいことを理解し支持する、と述べたが、中国は、インドの安保理常任理事国入りを支持してこなかった唯一の主要国である。

 訪中の経済的成果も平等ではなかった。モディが締結した220億ドルに上るビジネス合意の多くは、インドの企業が中国の物品を購入するためのもので、インドの500億ドルに上る対中貿易赤字をさらに悪化させるだろう。

 中印の貿易関係は、世界で最も不均衡なものの一つであるが、インドは中国の安い商品の市場への氾濫を食い止める努力をほとんどしておらず、モディが叫ぶ“Make in India”キャンペーンにも拘わらず、中国がインドにとり最大の輸入国であり続けることは確実であろう。

 中国は、貿易と商業的浸透により他国への影響力を強化することに長けている。貿易不均衡を許せば、インドは中国のこの戦略に効果的に資金を提供することになる。

 モディは24の協定締結など、今回の訪中の成果をよく見せようとしているが、中印の戦略関係の厳しさをぼやかすことはできない。新しいアプローチがなければ、中印関係は不均衡で議論を呼ぶものであり続けよう、と論じています。

出典:Brahma Chellaney,‘Modi in China’(Project Syndicate, May 18, 2015)
http://www.project-syndicate.org/commentary/modi-china-visit-sino-indian-relationship-by-brahma-chellaney-2015-05

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 モディ首相の訪中は、モディ首相が対中関係を変革する旅と位置付けたこともあり注目されましたが、この論説が指摘するように、印中関係は「変革」されたのではなく、関係の難しさが浮き彫りになった感があります。


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