2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月25日

 経済関係で約200億ドルの契約締結など成果がありましたが、領土問題を含む政治関係での進展は、インドの安保理常任理事国入りの支持のほかに目立ったものはありませんでした。

 ただ、日本にとり、印中関係が著しく良い状態というのは、地政学的に必ずしも好ましいものではありません。モディ政権は、これまでの政権よりも米、日、欧州諸国との関係を重視しており、南シナ海での中国の行動に対しても、日米と同じように批判的です。今後の対中牽制において、日米印は協力しうる状況がある方が望ましいでしょう。

 印中国境紛争についていうと、印中間で争われている主要な二つの領土、Arunachal PradeshとAksai Chinの規模は、オーストリアとスイスの領土に匹敵します。中国は、問題となっている領土に軍を侵入させるなど、圧力をかけています。この問題は印中間での火種として残ります。また中国・パキスタンの同盟ともいえる緊密な関係も、印中関係の改善へのブレーキになります。

 モディ首相は昨年の就任以来、活発な外交を展開し、国内改革も進めています。経済成長率は公式統計では7.5%で中国を上回っています。よくやっていると評価すべきでしょう。

 ただ、国内改革面では、モディは権力基盤を強化した後で困難な改革に取り組むという姿勢が強く、改革のスピードが遅いとの批判もあるようです。しかし、歴史を見ると、やりたいことを権力基盤がよくなるまで待っていて、結局できなかった事例が民主主義では多いように思われます。

  
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