テレビなどで“フランスで”などといわれるたびに、私は「それがどうした」と繰り返している。日本には日本の歴史と事情がある。隣の芝がきれいに見えるうちは、幼稚というしかない。事実がきれいであったら、それを見習えばいいだけのことである。他人を批判するために隣の芝に頼ることを『葉隠』では戒めたのだ。なぜかというと、無責任になるからである。
孫子の兵法に、「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」とある。主体的条件と客観的条件ということである。自らその立場を見なおすということは、地味なことであるから避けたいと思う。しかし、それは自己の成長をめざす者にとっては欠かせないことである。
よそさまのことをありがたがるとは、隣の庭・会社がよく見えるというのと同じである。この心理に陥ると愚痴がでてくる。愚痴では、問題解決はできない。それは他人の力をあてにする一種の甘えである。
かくして、『葉隠』はその甘えを断ち切るために覚悟を強調している。その覚悟というものが四つの誓い、四誓願である。この誓いは、現代流にいうと自己暗示である。これは潜在意識を刺激する最も効果的な方法なのである。
すくなくとも、大志をいだく者は、自分のおかれている条件を把握し、そこから地味な努力をすることを忘れてはなるまい。
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