When Lehman’s CEO arrived by limousine in the morning at a VIP entrance at the back of the building, his driver had already called ahead alerting the front desk in the lobby of his majesty’s imminent arrival. The front-desk attendant then hit a button programming one of the elevators in the rear bank to go directly to the thirty-first floor. A security guard would then hold the elevator until Fuld’s arrival. This was Fuld’s private transport to the heavens, the one that preserved his god-like existence. (p90)
「本社ビルの裏手にあるVIPエントランスに朝、リーマンのCEOがリムジンで乗り付けるとき、運転手はすでに前もってロビーの受付に陛下がもうすぐ到着することを知らせる。受付の担当者はそこでボタンを押す。そうすると、裏手のエレベーターの1つが、(役員フロアの)31階に直行するようにプログラムしてある。守衛はエレベーターの扉を押さえ、ファルドが到着するのを待つ。これが、天界へのファルドだけの移動手段だった。神に似た存在を守るための」
もちろん、経営トップが慢心していた面があったのは確かだろうが、そこからさらに踏み込んだ経営陣の実際の動きが見えてこないだけに読み応えにかける。
豚肉の営業マンからの立身出世
本書はむしろ、ひとりの青年が苦難を乗り越え憧れのウォール街で職を得て、債券トレーダーとして活躍したものの、不幸にして最後の職場のリーマンでリストラの一環で解雇されるまでの個人的な手記として読んだ方が非常に面白い。
皮肉にも、リーマンに入社するまでの半生を振り返った第1章「A Rocky Road to Wall Street」(ウォール街への困難な道)と、第2章「Scaring Morgan Stanley to Death」(モルガン・スタンレーを震え上がらせる)が、最も興味深く読める。
第1章では、事業で成功し株式投資も活発に手掛けた筆者の父親がバブルは必ず破裂するという信念のもと空売りを好んでしかけたエピソードなども披露、その後のアメリカの住宅バブル崩壊をも暗示しており読ませる。いつしかウォール街で働くことを夢見るようになるものの、有名大学に入らなかった筆者マクドナルドにとっては、ウォール街の名門投資銀行への就職は不可能に近かった。そこで、マクドナルドは就職活動のため事前の面談の約束もとらずに、投資銀行各社の本社に突然、押しかける作戦を実行する。どこでも門前払いされた筆者は一計を案じ、ピザの宅配に扮(ふん)してオフィスの中に入り込むことに挑戦したことなどをユーモラスに語る。
いったんは金融界への就職をあきらめて、冷凍の豚の切り身を売る営業マンの仕事につき、持ち前のバイタリティーで戸別訪問を繰り返してトップセールスマンにのし上がる。しかし、夢をあきらめきれずに、セールスの仕事をすぐにやめて独学で証券外務員の試験に合格。またまた、アポイントもとらずに、大手証券メリルリンチのフィラデルフィア支店に押しかけて、支店長に直談判し営業マンとして雇ってもらう。しかし、雇ってはもらったものの、支店長からは次のように通告される。
“Larry, you got a job here for six months. In that time I want you to bring in $6 million in assets and $100,000 in investment commissions. Fail and you’re fired” (p28)
「ラリー、6カ月間雇ってやろう。その間に、預かり資産で600万ドル、手数料で10万ドルを稼げ。できなければクビだ」