2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月9日

 2014年5月に中露が天然ガスの大規模輸出取引に合意した際には、中国のエネルギー需要はまだ堅調だったものの、現在では、中国経済にブレーキがかかり、エネルギー多消費型の経済から効率的なサービスセクターを重視するようになっている。既に7月末には、中国企業が第2シベリア天然ガスプロジェクトへの協力を停止している。

 ロシアのガスプロムは、大規模プロジェクトを独力で建設する資金を持っていないようだ。ガスプロムの利益は昨年、ウクライナ問題もあり、90%も減った。

 2019年までにウクライナ経由のガス輸出を停止するとの目標をロシアが突然取り下げたのは、代替計画の非現実性をおそらくプーチン大統領が自覚したからだろう、と解説しています。

出 典:Keith Johnson‘Putin’s Energy Diplomacy is Getting the Cold Shoulder’(Foreign Policy, August 5, 2015)
http://foreignpolicy.com/2015/08/05/energy-markets-keep-russian-bear-hug-at-arms-length/

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 上記は、良い解説記事です。

 ロシアは、多くのガス・パイプライン・プロジェクトを打ち上げていますが、トルコ経由の欧州向けも、シベリア経由のアジア向けもうまく行っていません。その根本原因は、石油・ガス市場が基本的なところで変わってきたからではないかと指摘していますが、的を射た指摘です。

 エネルギーは、ここしばらくは買い手優位の市場になるでしょう。これはロシアにとっては不都合なことで、認めたくはないでしょうが、現実を踏まえない政策ビジョンは、普通、失敗します。要するに、地政学的な利益を確保するために、エネルギー輸出を使える状況にはないのに、そうできるかのような幻想にプーチン大統領は捉えられている感があります。自分の交渉ポジションの弱さに気づくことが早ければ早いほどよいでしょう。

 ウクライナとは今の契約終了後、欧州向けのガスを通過させる協定締結を交渉することになりました。この交渉はロシア・ウクライナ関係に大きな影響を与えると思われますが、ロシアがウクライナに融和的になるか、強硬に出るかは関連情報が少なく、まだ判断できません。ウクライナの対ロ交渉では、ウクライナはロシアに侵略されている弱い国であり、西側の支援なしには対等の交渉は難しいでしょう。

 いずれにしても、ロシア経済、更にロシアの衰退はプーチン政権のもとで、どんどん進んでいるように見えます。

ウクライナ危機の真相 プーチンの思惑
小泉 悠・ 佐々木正明・廣瀬陽子・亀山郁夫・ 佐藤 優・Wedge編集部

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