世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月23日

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 オバマ大統領は8月、チュコト海での資源探査をRoyal Dutch Shellに許可したが、ロシア、中国に伍すことができるよう、許可対象を広げる必要がある。また米国は本年北極評議会の議長国となったが、それを利用して北極海での海運、資源開発、漁業に関わる基準・慣行の設定、探査に関わる安全基準の強化等について旗を振るべきである、と述べています。

出典:Gary Roughead,‘In the Race for Arctic Energy, the U.S. and Russia Are Polar Opposites’(Wall Street Journal, August 25, 2015)
http://www.wsj.com/articles/in-the-race-for-arctic-energy-the-u-s-and-russia-are-polar-opposites-1440542608

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 近年、北極海の氷が減少するにつれて、この海域に豊富に賦存すると見られる石油・天然ガス資源開発がイシューになっています。ロシアは自国の大陸棚延長を国連に申請し、専管水域を拡大しようとしています。グリーンランドを有するデンマークも、北海油田の夢再びを狙って活発な外交を展開してきました。米国はこの海域ではアラスカが接するのみで、アラスカ本体にも資源が賦存していますが、本件論説が指摘しているように、ロシアが軍隊までこの海域で増強している現状では、北極海への対応は米ロ関係におけるコマとして使えるものとなっています。

 もっとも、北極海の氷は2011年記録的な後退を示した後、また増加したようですし、油価が下落したこと、そして対ロ制裁によってロシアは深海底掘削技術・ガス液化技術の双方入手を止められたこともあって(ロシアはこの面での自前の技術を持っていません)、議論の切迫度は後退しているものと思われます。

 米国の元駐ロシア大使James Collinsは26日付Carnegie財団ホームページ掲載の論説で、①同地域でのロシア軍の増強は挑発的である、②しかし米ロを含めた周辺諸国は、北極海の公海における漁業の禁止で合意できたし、近く開かれる海上保安当局間会議では海難救助における協力強化についても話し合えよう、③また同海域で砕氷船が不足することが懸念されており、この面でも話し合いが必要、④同海域でのロシア軍の動きは問題であり、北極評議会傘下の国防担当者間会議で話し合われるべきである、⑤米国は国連海洋法条約を批准しないと、北極評議会の他の参加国と同等の基盤に立てない、等の追加的諸点を提起しています。

日本は、北極評議会のオブザーバー国として、この問題には横から参与していくしかありませんが、ロシアの大陸棚延長承認については発言権を行使できます。日本が注意深い検討と対応を要するのは、北極海資源開発、あるいは北極海通商航路の利用が本格化した場合、中国がそのシーレーン防護のために、宗谷・津軽・対馬海峡、南西諸島間、及び日本海通航の安全に切実な関心を示すようになるだろうということです。

  
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