2024年12月23日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2015年9月19日

 我々はお互いのニックネームである「アリ」と「タカ」で呼び合うことにした。彼女は写真を取り出し「わたしの天使たちよ」と楽しそうに説明。写真はケベックの知的障害児童たちで彼女は教育支援活動ボランティアをやっており、将来はその方面の専門家になりたいという。彼女と話しているとなぜか心が落ちつき気持ちが晴れてくる。彼女には不思議な魅力があり、とても19歳とはおもえない。常に穏やかで暖かく好奇心とユーモアに溢れている。

 私が寒いので厚手の靴下を履いてビーチサンダルで歩いているのをみて「おー。忍者の足袋。かっこいい。(Oh! Ninja sox.So Cool!)」なんてからかう。また彼女が19歳と聞いて私が少し驚くと、彼女があなたは幾つなのと訊ねた。私が「まだ60だ。(Only sixty)」と答えると「ミドルエイジかと思ったら、私より若いのね。まだ“じゅうろく”(Only sixteen)か」とまぜっかえす。

 旅、家族、人生、文学、信仰など無意識のうちに話題がどんどん広がってゆき、時間は静かに過ぎていった。人を包み込むような優しさと慎ましさ、まるで聖女のようだ。本来であれば二人を隔てているはずの年齢、世代、言語、人種、国籍、文化などの違いが二人の会話では全く障壁にならない。パーフェクト・バリア・フリーの心の交流。これまでの人生でこのように充実した真に自由な会話を楽しんだことがあったであろうか。

 ふと気がつくと時計は零時をまわっていた。

 なぜあんなに自由で楽しい会話ができたのか。サントリーニ島という舞台装置が私の心の壁を取り払ったのではないか。それゆえ19歳のカナダの女子学生と60歳の日本の年金生活者のオジサンが完全に対等の自由人として向き合えたのであろう。すなわち、サントリーニ島の美しさに私自身の心が開かれ未知の人と交流する心の準備が出来ていたからこそアリーゼに遭遇した時に虚心坦懐に語り合うことができたのではないか。

 人生という旅で心を閉じて歩いていたら大切なものを見過ごしてしまう。

アリーゼ(右)とバンクーバーの大学生アルビナ

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