さらに日本のフェスと違うのは、音楽以外のイベントが多いことである。アート、DIY、それにスポーツ。ストリートスポーツは音楽との親和性が高く、今年もビーチサッカーやストリートバスケット、ビーチバレーボールなどが行われた。ここで興味深いのは、これらのスポーツイベントにもロスキレ・フェスティバルのチャリティ精神が貫かれていることだ。デンマークのスポーツブランド「hummel(ヒュンメル)」と共同開催したOrange Karma Cupでは、全ての試合で決められた得点数1162と同じ数のボールがデンマークの障がいのある子どもに送られることになった。
楽しみながらチャリティを行うデンマークスタイル
楽しみながら、あるいは気づかないうちにチャリティをしている、という手法は、デンマークでは馴染みのあるやり方である。コペンハーゲンで20年ほど前に始まった「The Cake Day」は、毎年5月に洋菓子店やパン屋が、大きなホールなどで大規模なビュッフェを催す市民イベント。入場チケットを購入すると、参加者はパンやケーキが食べ放題で、その収益は小児がんの基金に使われている。
日本でデンマーク発のチャリティに参加しようとすると、チャリティ商品を購入することが早道だ。例えば、オバック・ウォッチはデンマークの難民救済プロジェクトを応援していて、オバック・レフュジー・ウォッチを購入すると20USドルが寄付される。
そして、より広く、子どもから大人まで楽しめるイベントが今月19日から東京で開催される。「PIECE OF PEACE 『レゴブロック』で作った世界遺産展 PART-3」は吉祥寺パルコ7Fで9/19より10/18まで。LEGOは2014年上期に、「バービー」人形などを展開する米マテル社を抜き、玩具世界一となったデンマークの会社。このイベント、入場は無料だが、グッズの売上の一部が世界遺産を守る活動に寄付されることになっている。レゴを1ピースずつ組み合わせ、大きなものにしていくように、風化や開発、紛争などにより失われつつある世界遺産を次世代の子どもたちに引き継ぎ、平和な社会に繋げようという試みだ。
今年ロスキレ・フェスティバルに初めて参加したアンダース・スティグ・ジェンセンは、フェスの様子をこう話した。
「ロスキレ・フェスティバルはすごいロックフェスだと思うよ。なんといっても、あらゆるタイプの人が自然にくつろげる場所があるし、会場はとてもリラックスした雰囲気で、誰とでも友達になれるような感じなんだ。それにイベントの利益全てが社会を良くしていくチャリティに使われるのもすごくいいよね」
一方的に寄付するわけではなく、楽しんでいたら、気づかないうちに寄付したことになっている。楽しんだ結果、社会がより良く変わっていく様を見ることができる。デンマークにおけるこうしたチャリティは、個人と社会を繋げ、文化や社会の多様性を育んでいるのだと思う。「私たちはこの世界の一部です」と熱く語ってくれたクリスティーナの言葉が胸に残った。
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