2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月8日

 リチャード・ハース米外交問題評議会会長は、8月28日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に「イラン核合意:賛成、しかし…:合意を単に承認することはその多くの足りない問題点を放置する。議会がすべきことは次の通り」とし、合意の承認に条件を付すことを考えるべきである、と論じています。

画像:iStock

 すなわち、イランの核能力を制限する合意、共同包括行動計画(JCPOA)はイランの核計画に10年以上、制約を加える。同時に合意は、イランの中東での問題を放置し得る。さらに合意は、イランの核計画問題を何ら解決しない。10~15年後に遠心分離機や濃縮ウランへの制限はほぼなくなり、問題はより大きくなり得る。

 では、米議会は何をすべきか。議会はこの合意の善悪ではなく、この合意で米国の状況が改善するかどうかで投票すべきである。

 JCPOAは妥協の産物であるが、再交渉は選択肢ではない。再交渉を求めれば、イランではなく米国が問題とされよう。制裁への国際的支持もなくなるだろう。

 合意の拒否は、イランの核活動再開や軍事攻撃の可能性を高め、米国政治の機能不全を世界に示す。

 他方、単なる賛成にも、問題がある。しかし、第3の選択肢がある。それは合意賛成に、米国が7点の政策をとることを条件とすることである。

 1. 米国は、中東とペルシャ湾で、同盟国の安全保障、テロと大量破壊兵器の不拡散、エネルギー供給確保など、死活的利益を持つ。米国は軍事力を含む必要な手段でこれを守る。

 2. 米国はイランによる核兵器取得を死活的利益への脅威とみなし、許容しない。

 3. 米国は、イランがJCPOAを順守すると期待する。米国がイランによる違反と判断する行為については、制裁や適切な対応を取る。IAEAがその役割を果たすことを確保する。

 4. 米国は、中東、湾岸での核拡散に反対であり、友好国や同盟国との安保取り決めを結ぶ用意を持ち、兵器も供給して、これらの国が核兵器入手にいかないようにする。

 5. イランのテロ支援、人権侵害への制裁は維持する。米国はイランへのミサイル技術流入を、安保理決議で制裁が撤廃されても、妨げるようにする。

 6. 米国は、安保理常任理事国とドイツと共に、イランの高濃縮ウランの在庫を制限する追加協定の協議を開始する。

 7. 政府は議会にJCPOAの実施などについて半年ごとに報告書を提出する。


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