2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月8日

 オバマは8月19日のナドラー下院議員への書簡で議会と話し合う用意を示した。ホワイトハウスと議会が双方に受け入れ可能な立場を作るため、歩み寄るべきである、と述べています。

出 典:Richard Haass ‘On the Iran Nuclear Deal: Yes, but . . .’(Wall Street Journal, August 28, 2015)
http://www.wsj.com/articles/on-the-iran-nuclear-deal-yes-but-1440803802

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 イランとの核合意については、米議会の共和党がイスラエルの反対も踏まえ、不十分な合意として承認しないとの姿勢をとり、オバマ大統領は反対論者をクレイジー、気違いじみている、代策を出していないと反論してきました。議会の不承認決議には、オバマ大統領は拒否権を行使すると明言しています。この拒否権は、上下両院の3分の2の多数があれば、ひっくり返すことができますが、今のところ、上院での3分の2の多数を反対派がとるのは不可能な情勢です。

 下院でも、米国以外の安保理常任理事国とドイツがこの合意が最善であり、これを拒否して制裁を再度課すことには協力しないとしていることもあり、反対派が3分の2をとるのは難しいでしょう。したがって、このイラン核合意を米議会がダメにする可能性はもうないでしょう。オバマ大統領が言うように、反対派の議論はクレイジーであるので、イラン核合意が持続することは大変良いことです。そもそも、この合意はイランとP5+独の合意であり、米・イラン間の2国間取り決めではありません。

 リチャード・ハースが言っている7点は、追加協定締結が再交渉になりかねないとの問題を含む恐れがありますが、米国のこれまでの政策を再確認するものです。特に問題があるわけではありませんが、取り立てて今言う必要があるのか、疑問です。

 イランにも革命防衛隊や保守勢力など反対派がいます。この合意はきわめて微妙なバランスの上に成立しています。余計なことをしてバランスを壊さないようにすべきでしょう。

 この問題についての議論の中で、デニス・ロスとペトレイアス元CIA長官は、15年後イランが核兵器入手に走ったら米国は武力攻撃すると明言し、イランを抑止すべきと、15年後の大統領の手を縛る提案をしました。また、キッシンジャーは、イランの核開発を10年後に容認する合意だと批判しました。こういう人は、イランがNPT締約国であり、15年後もそうであろうということを無視して論を展開しているきらいがあります。

  
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