ハマス狙うIS
こうしてイスラエル、パレスチナの対立が激化する中、イスラム原理主義組織ハマスが牛耳るガザからは9月以降、散発的にロケット弾がイスラエル領内に撃ち込まれ、イスラエル軍機の報復空爆でパレスチナ人母子が死亡するなど昨年夏のガザ戦争の悪夢が蘇っている。
東京23区の6割という狭い面積に180万人のパレスチナ人が居住するガザはイスラエルとは高い塀によって隔離され、“巨大な監獄”と呼ばれてきた。06年以降、ハマスが実効支配してきたが、再三のイスラエル軍による攻撃と爆撃による破壊が繰り返され、失業率は43%にも達し、住民の不満は極限にまで高まっているのが実状だ。
住民の批判の矛先はハマス指導部にも向い始めているが、こうした貧困、困窮、絶望が充満する中で、より過激な武装闘争を主張するグループが勢力を拡大してきた。そのグループは「イスラム国の支持者たち」。独自の軍事部門も創設し、イスラエル向けのロケット弾も製造し始めているようだ。
専門家らによると、「イスラム国の支持者たち」の勢力は2、3年前は数百人規模だったが、ISが国家の樹立宣言をしてシリアとイラクで勢力を拡大するにつれ、組織の人数も2000人~3000人にまで急増した。同組織はガザからISに合流したパレスチナ人を通じてISとの関係を深めようとしており、またガザに隣接するエジプト・シナイ半島のISの分派「シナイ州」とも関係強化を図っているようだ。
この「イスラム国の支持者たち」に最も脅威を抱いているのがハマスだ。5月以降ガザで、ハマスを狙った小規模な爆弾事件が約20件も頻発しており、「イスラム国の支持者たち」の手によるものと思われている。
「イスラム国の支持者たち」はハマスを不信心者と断じており、同組織のスポークスマンは「われわれはハマスやイスラエルのノドに突き刺さった骨のようにとどまる」と不気味な発言をしている。パレスチナにもまた、新たなテロの影が忍び寄ろうとしている。
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