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2015年11月13日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

「輸入材も混ぜる」

 国交省・林野庁のCLTの普及に向けたロードマップによると、16年初めに5万立方メートルの生産能力を実現、24年までに中層建築物(3~4階建て)の約6%がCLT工法に置き換わったとすると、同年には年間50万立方メートルの生産体制を構築する必要があると描いている。

銘建工業で製造された国産CLT

 中島社長はCLT の原料となる材木の調達について「当面は国産のスギを中心に使うが、スギは強度の面でほかの材木に劣り、国産材には安定供給に課題がある。

 ヒノキ、カラマツなどの国産の樹種、あるいは輸入材も混ぜることで国産材の使用を増やしたい。国産材、輸入材を適材適所に配することが、国産材の有効活用につながる。原料をすべて国産材で賄うのは困難だ」と語った。

 その理由として、欧州は木材の伐採から加工までのインフラ設備が整備されており、日本とは効率面で大きな格差がある点を指摘、日本の材木が競争力をつけるためには、CLTなどの新しい木材需要を起爆剤として、林業を含めて生産効率の高い体制を作り上げることが不可欠だと強調した。

 行政の旗振り役として町おこしをしたい太田市長は「『地産地消』を推進するためには地元の材木をできるだけ使ってほしい」という立場だが、CLTで新規の事業を立ち上げようとしている中島社長は「そうはいっても、競争力のない国産材を無理して使うと製品の採算が取れなくなる。並行して国産材の強化することが必須の課題だ」とみており、ビジネスマンとしては譲れない一線がある。来年以降にCLT の新基準ができて本格的な普及が始まった段階で、国産材と輸入材の比率がどうなるかは未定だが、輸入材の方が安くて質が良いということになれば、太田市長が描く目算が外れる恐れがある。

日本の森にとってラストチャンス

 日本は国土面積の66%に当たる森林面積は2510万ヘクタール、森林の蓄積は49億立方メートルある。国土面積は小さいが森林資源は世界屈指といえる。課題はこれが有効に利用されずに放置されていることだ。しかも、いまは利用可能な木材10齢級と呼ばれる樹齢46~50年の樹木が伐採時期を迎えている。にもかかわらず、世界第3位の木材マーケットに日本ではあるが、伐採してから製品化するまでの効率が悪いことから、多くが未使用のままになっている。

 木材自給率は1964年に木材輸入が完全自由化され、2002年には18・8%にまで落ち込み、その後、木造建築が見直されてきたことなどから、14年には31.2%まで回復した。30%台に戻したのは26年ぶりのことだが、現段階では輸入木材のシェアが圧倒的に高い。

 林野庁はCLT が新建材として注目されたことを林業再生のラストチャンスととらえており、国交省などと協力して木造住宅と住宅以外の木造建築物の需要を増やすことで、林業再生と地方再生を同時に実現できればと願っている。国内建築物のうち木造の割合が2階建ては約7割だが、3階建ては3割しかなく、4階以上はほとんどない。このため同庁は3階以上の新築がCLTに置き換われば、木材自給率が改善するのではないかと期待する。そうなれば、寂れる一方の林業が蘇る可能性もある。しかし、林業はこの10数年間、補助金頼みで何とか生き延びてきたのが実情で、効率生産により競争力をつけないことには、CLTの新規需要が生まれたからといって林業再生に結びつくかどうかは疑問視する見方もある。

  
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