世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月26日

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 米国とアジアの関係国は、中国封じ込めではなく対中均衡を図り強圧と紛争を阻止するために、協力強化を継続すべきだ。これには、航行自由維持活動をする米海軍や南シナ海で主権を主張する国々だけでなく、地域のすべての関係国が関与すべきだ。米国が開放姿勢で協力を築こうとしていることは良いことだ。米国との多国間協力に対する関心は増えている(フィリピンの基地使用再開やベトナムへの装備売却、艦艇のシンガポール配備、豪州ダーウィンへの米海兵隊配備など)。地域内国同士の協力も深まっている。米国は、これらの国々の間のインターオペラビリティー深化を支援するとともに、これらの国が航行自由行動に参加するよう慫慂していくべきだ。

 直近の航行自由行動は重要であるが、それだけでは不十分だ。東南アジアの国々との安保関係と共同活動を強化することによって、戦力投射能力を拡大させる中国を「管理」することができる、と論じています。

出典:Richard Fontaine,‘Projecting Power in the South China Sea’(Wall Street Journal, October 22, 2015)
http://www.wsj.com/articles/projecting-power-in-the-south-china-sea-1445533018

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日本も東南アジア諸国と共同歩調を

 説得力がある論説です。フォンテインは、南シナ海問題は、領土紛争問題にとどまらず、島への軍事アセットの配備を通じた戦力投射能力の強化という軍事問題の側面があることを強調し、それゆえ米国による「航行の自由作戦」だけでは不十分だと言っています。

 習近平の米国での言葉とは裏腹に、島を軍事基地化することによって中国は南シナ海を内水化しようとしています。他方、中国の対艦ミサイル開発によって米空母が大陸へ近づけなくなるリスクも指摘されており、南シナ海問題はそのような大きなピクチャーの中で考える必要があります。フォンテインが、島は小規模であり紛争の際には容易な攻撃対象になるとする、多くの分析家の見解に反論するのは正しいです。さらに、中国の威圧外交により、関係国の対中対応にバラツキが見られるようになっています。

 南シナ海の問題が先の米中首脳会談で激しく議論されたことは共同記者会見やその後の報道によって知ることができます。習近平は、古来中国の領土であるとして主権を主張して譲らず、オバマも取り付く島もなかったようです。それで、会談後、オバマは中国の領土主権の主張に異議を唱える目的で、米艦船を12海里水域に派遣する方針を最終決定しました。

 域内国との共同行動が不可欠であるとのフォンテインの指摘は、まさに重要です。今やこの問題はアジア太平洋の最大の安保問題です。日本も注意深く協力に加わるべきで、いずれ他国との共同航行行動を考えるべきでしょう。また、そのような協力体制構築に貢献すべきです。対中関係を慮って慎重姿勢を維持しているインドネシア、マレーシアにも働きかける必要があります。11月上旬の中谷防衛相の訪越は、日本とベトナムの海洋安全保障上の協力推進を再確認したという意義がありました。
  
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