アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のマイケル・オースリン日本研究部長が、10月7日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、最近の紛争のエスカレーションの様相を描写し、それは米国の不在という力の空白を衝いて生じている、と指摘しています。
米国のリーダーシップ欠如で伸張する“侵略者”たち
すなわち、プーチンの空軍は米国が支援するシリアの反体制派を意図的に標的としている。中国は南シナ海で人工島を作り、要塞化している。これがエスカレーションである。オバマ政権は米国の利益に挑戦する侵略的な国家に反応するか、さもなくば、米国の地位を損ない、モスクワと北京との衝突を招くことになる。
大国が侵略者を抑止することに失敗すると彼等はよりリスクのある行動に出る。侵略的な機会主義者は弱さを嗅ぎ取る。オバマ政権は、ロシアには制裁を課している、中国に対してはアジアへのリバランス政策を採用しているというであろうが、事態は明らかに協力と問題解決から遠ざかる傾向にある。右派の保守主義者と左派の進歩主義者は、力強い米国のリーダーシップは国を不必要なコミットメントにいざなう罠だという。
しかし、オバマの舵を失った外交と確信の欠如は最早無視できない。明確な米国の戦略と秩序を維持する決意を示すのでなければ空白を生む。習近平やプーチンの如き機会主義者はこの空白に入り込む。オバマは難しい選択に直面している。世界秩序の更なる浸食を黙認するか、それとも行動するか。いずれにもリスクはあるが、行動しないことによって侵略的なエスカレーションは継続する。
中国にその人工島を要塞化させる一方、米海軍が、中国が主張する虚構の領海内を航行することを控えることは南沙諸島上空の防空識別圏の設定、という更なる要求の拡大に繋がり得る。この海域には領有権を主張するマレーシア、フィリピン、ベトナムもあり、米国が傍観する間に問題は急速に制御不能に陥り得る。
ロシアに米国が支援するシリアの反体制派を破壊することを許し、アサド政権を生き長らえさせることは中東における米国の信用を失墜させ、プーチンとイランを勢いづける。イラクのシーア派の議員はロシアがイラクでもISILを攻撃するよう求めているという。