「4000基以上のローコストサテライトを打ち上げる」とぶち上げたイーロン・マスク
今回米軍のサテライト事業の一角に食い込むことで、スペースXには多大なビジネスチャンスが転がり込む。空軍の計画では2018年から合計9基のサテライトを打ち上げることになり、スペースXがすべてを請け負う可能性が出てきた。ただしスペースXでは11月19日の時点で「空軍より正式の依頼はなく、現時点では未定」とコメントしている。
マスク氏は今年1月、「4000基以上のローコストサテライトを打ち上げ、全世界でのインターネット接続を可能にする」計画をぶち上げた。実施予定は2030年だが、低コストを実現するため「繰り返し使えるロケット」の開発にすでに着手している、と発表した。
このインターネット用サテライトはグーグル、フェイスブックなども独自に計画を持ち、今後競争がホットになる、と考えられる分野だ。しかしすでにNASAとの契約を持ち、今回「米政府御用達」のサテライト打ち上げに関わることで、スペースXが一歩前に出た。
もちろん不安要素はある。マスク氏自身「4000基のサテライト打ち上げは今のスペースXにとっては負荷の大きいミッション」と認めている通り、かなりのリスクを伴う計画だ。また、NASAとの契約を取ったは良いが、今年5月スペースXの「ファルコン9」ロケットは国際宇宙ステーションへの貨物輸送ロケット打ち上げに失敗、それ以降スペースXはまだロケット打ち上げを行っていない。
もし空軍サテライトの打ち上げに失敗すれば、ULAからは「信頼性のない企業と契約した米政府」への非難の声が上がるだろう。スペースX自体の存続にも関わる問題に発展しかねない。
しかし成功すれば、スペースXは自動車業界にテスラが投げかけたインパクト以上に、旧弊体質の米航空宇宙産業に一石を投じることになる。業界の風雲児、イーロン・マスク氏の手腕にますます注目が集まりそうだ。
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