長期停滞への対処は抜本改革しかない
経済を取り巻く環境の大きな改善と実際のGDPの低迷を見比べると、いままでと同じ政策や企業行動では経済活性化は遅々としてしか進まないように見える。それは、財政赤字による景気刺激を行ってもますます一過性でしか効かないことであり、需要の強弱に一喜一憂する企業行動をとり続けてもなかなか競争力向上にはつながらないことである。
特に、昨年度以降の芳しくない景気展開が示すことは、日本経済の底流にある構造問題がいよいよ目立ってきた可能性である。それは、先進国の潜在成長率が数十年低下し続けており、人口の高齢化、グローバル化、IT化が相まって賃金、特に非熟練労働者の賃金が押し下げられたとのサマーズ元米財務長官が示した長期停滞論(Secular Stagnation)の指摘に通じるものがある。
この長期停滞論に即して言えば、日本経済が成長力を取り戻すには、より抜本的に人材の確保と強化を行うことが一つの方策となる。現在のピッチで少子高齢化が進めば、2030年代以降の日本のGDPは就業者数減少で毎年1%あまり下押しされると試算されている。
これを根っこから跳ね返すには、最終的には人口減少を止める抜本的少子化対策しかなく、当面は人々の資質を不十分にしか活用できていない労働市場の改革や教育強化を断行してより付加価値の高い人材の育成確保を図ることが不可欠である。
一方、一段の生産性向上やイノベーション加速も実現しなければならない。このためには、日本企業が出遅れているIT活用を加速させることが必要である。同時に、TPPも契機とした一層のグローバル化も企業の活力増に大いに資することになる。
7-9月期のマイナス成長が一層明らかにしたことは、日本経済の活性化には景気刺激策だけでは不十分で、質的変化を伴う構造的対策がなければならないことに尽きる。それは、日本でのヒト、モノ、カネの活用が量的のみならず質的にも不十分であり、質的に活用するには、不振企業退出、市場競争を促す徹底した規制緩和・対外開放や正規非正規を問わない成果主義導入など、いよいよ大きな痛みを伴う改革を断行しなければならないということである。
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