政権発足時には改革の旗手と期待された李克強総理だが、経済政策も含めて権力は習総書記に集中しており、歴代の総理の中でも疎外された立場にある、と10月17-23日号の英エコノミスト誌が報じています。
李克強の影響力がここまで小さい理由とは
すなわち、中国では総書記が党、総理が政府を統括するのが建前だが、党と政府は明確に分かれておらず、総理の力はその時々で変わる。李克強は歴代の総理の中で最も弱体だ。このことはこの夏、政府の株式市場介入について李から何の説明もなかったこと、「中国は元の切り下げを望まない」と李が言ったわずか4カ月後に元切り下げが行われたこと、さらに、李が提唱した大胆な経済改革がほとんど実行されていないことからも明らかだ。
李の問題は能力の有無よりも、力の無さにある。李は党の序列第2位だが、経済政策の決定からほぼ排除されているのは明らかだ。能力よりもコネがものを言う中国にあって、党の中堅官僚の息子である李は、習のような太子党ではなく、共青団が出身母体だ。
習は総書記に就任すると、そうした李を押しのけ、自ら経済政策の監督に乗り出した。2013年12月には中央全面深化改革領導小組を創ってその長に就任し、また、中央財経領導小組の長にもなった。株式市場への介入を決めたのは中央財経領導小組だろう。
李の影を薄くさせているのが、中央財経領導小組のブレーンで、習が引き立てた劉鶴同小組弁公室主任の存在だ。彼は習の子供時代の遊び友達だったらしい。
李は政権二期目には総理にならないかもしれない、との噂さえある。しかし、既にほとんどの政策は李をバイパス、習を脅かす存在ではなくなっているので、おそらく李は総理を続けることになろう。党中央委員会にはまだ彼の仲間がおり、李は今も対外的に中国の経済政策を代表する立場にある。逆に、李を解任すれば、中国経済への信頼が揺らぐ。それに、彼を温存しておけば、危機に見舞われた時にスケープゴートに使えるかもしれない。