海野素央のアイ・ラブ・USA

2015年11月30日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 それに関する有権者の声を紹介しましょう。筆者がアイオワ州デモインの西部地区に住む75歳の白人男性の家を訪問すると、彼は「ヒラリーをセールスする必要はないよ。彼女のことはすでに知っているから」と語った後で、質問をしてきたのです。

 「トランプが人気がある理由が分かるか」

 「どうしてでしょうか」

 筆者が尋ねてみると、彼はこう回答したのです。

 「トランプは、政治家でないから人気があるんだ」

 16年米大統領選挙は、

 「非職業政治家VS. 職業政治家」

 「アウトサイダーVS.インサイダー」

 「非エスタブリッシュメントVS. エスタブリッシュメント」

 という構図になっています。非職業政治家でアウトサイダーのトランプ氏は、風のベクトルを読みながら職業政治家やメディア関係者といったエスタブリッシュメントを攻撃することによって、白人で高卒の低所得者層から特に強い支持を得ています。

図表2・16年米大統領選挙における対立の構図(筆者作成)
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 ちなみに、元フロリダ州知事で共和党の本命と言われたジェブ・ブッシュ氏は「職業政治家」「インサイダー」「エスタブリッシュメント」の3つのカテゴリーに入るため、逆風を受け支持率が低迷しているのです(図表2)。

 ルビオ氏は職業政治家ですが、上院議員1期目でインサイダーのイメージは強くありません。同様に、テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)も1期目で、しかも同議員は幹部に逆らう反エスタブリッシュメントの急先鋒として、保守派から人気を集めています。

トランプ候補の風の強さと速さ

 次に、風の強さと速さです。トランプ氏は15年6月16日に出馬をしました。当初、泡沫候補と言われたトランプ氏ですが、5カ月以上も上位におり、彼の周りに吹き荒れる風は継続的で、もはや突発的とは言えません。出馬から約2カ月の間に、同氏は風速を増しながら猛スピードで支持層を固めていったのです。

 トランプ氏は、「既存の体制の中で不公平に扱われている人」「既存の体制から外され忘れ去られている人」を「サイレント・マジョリティ」と呼んでいます。同氏は、中低所得層及び退役軍人は現在の経済システムから恩恵を受けていないと主張し、彼等を見方につけて反エスタブリッシュメントの風をもたらしているのです。

 さらに、トランプ陣営はキャンペーンソングに「トゥイステッド・シスター(Twisted Sister)」というヘヴィメタルバンドの「もうごめんだ(We're Not Gonna Take It)」という曲を使っています。同陣営は曲の動画に登場する高圧的な父親をエスタブリッシュメント、他方、反逆する子供を反エスタブリッシュメントとして描いているのです。この曲も反エスタブリシュメントの風を強める役割を果たしています。

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