2024年7月27日(土)

金融万事 塞翁が馬

2015年12月7日

FinTechの具体例、貸し付け分野

米国におけるFinTechベンチャー企業の内訳

 2014年の世界FinTechベンチャー投資は約120億米ドル(前年比約4倍)となり、その約8割が米国だ。図1は米国FinTechベンチャー企業(約1300社)のサービス分野別内訳となっている(会社数ベース)。

 1位でFinTechベンチャーの約2割を占めるのは「貸付け」サービス(=ローン)で、Marketplace Lending(マーケット・プレイス・レンディング)やP2P Lending(ピー・ツー・ピー・レンディング、Peer to Peerの略語)とも呼ばれている。2000年代中盤頃に始まった業態で、インターネットのウェブサイトを介してローンができ、その金利は銀行よりも平均で3割程低くなっている(借り手の信用状況や期間にもよってピンキリだが、現在のローン金利は約5~30%)。

 同じウェブサイトでそういったローンへの貸し手・投資家も募っている点が斬新で、信用格付け別にパッケージされている場合も多いが、平均して(不良債債権含む)年率で5~10%程のリターン、伝統的金融機関が提供する預金性金融商品が金利数%の中、とても魅力的だ。

 個人に限らず中小企業対応もあり、数万円~数百万円規模のローンと、それに対応する貸し手・投資家をひたすらマッチングするシステムで、低コストの良さが借り手と投資家に還元されている。彼らのウェブサイトを訪れる事を是非ともお薦めしたい。ディスクロージャーの良さ、サービスとして徹底した使いやすさ、学ぶ事は多い。[注]

 世界でこういったプラットフォームで貸し出される金額はここ数年急増し、昨年は合計240億米ドルとも言われている。この約半分弱が米国であり、英国、中国、そして世界的な拡大が今後想定される。

 ただ、ご想像つく通り、米国や英国の伝統的金融機関は既にこうしたFinTech企業の買収や提携を始めている。また、こういったローンに対するヘッジファンドや機関投資家の投資も急騰。伝統的な金融市場とこのローン市場との(資金フローの)融合にまで達している。

 因みに日本でも全くこういった会社・サービスが無い訳ではない。”ソーシャルレンディング”という呼び名のもと、maneo(マネオ)やAQUSHがあるが、いずれも貸金業や第二種金融商品取引業の登録をし、集団投資スキーム、預託と匿名組合への出資を組み合わせた複雑な設定になっている。法整備以外に日本独特の金融経済趣向もあり、海外のように一般市民を動かし、伝統的な金融サービスの脅威となるには至っていない。

 他の分野のFinTechサービスについては次回紹介させて頂く。

[注] ご参考 Lending Club https://www.lendingclub.com/ , Prosper https://www.prosper.com/ , OnDeck(事業特化型)https://www.ondeck.com/ , Zopa http://www.zopa.com/ , Upstart https://www.upstart.com/invest , Lendinvest(不動産特化型) https://www.lendinvest.com/ , Funding Circle(事業特化型)

  
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