今年も世界有数の映画の見本市「アメリカン・フィルム・マーケット(AFM)」が、11月4日から11月11日まで、ロウズ・サンタモニカ・ビーチホテルなどで開催された(今年で36回目)。AFMには、毎年、映画製作会社、プロデューサー、脚本家、配給者、金融家、業界幹部、俳優、海外メディア、世界の映画業界にサービスを提供する業者など、業界関係者が世界各国から8000人以上参加する。これは、フランスの「カンヌ映画祭」やイタリアの「MIFED」と並ぶ見本市だが、コンペや受賞式ではなく、商談に特化する。
「今年は、韓国、中国、ドイツ、インドからのバイヤー数が最多の年。70カ国以上からバイヤーだけで1600人近くが訪れた」。こう話すのは、主催のインディペンデント・フィルム&テレビジョン・アライアンス(IFTA)の副社長、ジョナサン・ウルフ(Jonathan Wolf)氏。「この8日間で、毎年1ビリオンドル以上の契約が結ばれるため、AFMは映画産業のイベントのなかでも参加必須のイベントだ」とウルフ氏は続ける。AFMで開催されたのは、バイヤー向けの試写会、展示会、カンファレンス、ラウンドテーブル(円卓会議)、ネットワーク作り、カクテルパーティなどだ。
初日(11月4日)のハイライトは、バイヤー向けに行われたGFM Filmsの映画「ブレージング・サムライ」のプレゼンテーションだ。将軍の声を担当したコメディ映画の巨匠、メル・ブルックス(Mel Brooks)氏や、スパイス・ガールズのメルビー(Mel B)などが出席。プロデューサーのロブ・ミンクオフ(Rob Minkoff)氏は、同作品のクオリティの高さをこのように表現する。「初めて台本を読んだとき、大声で笑っている自分に気がついた。そこでわかったことは、この映画は本当によい作品になるに違いないということ」。
メル・ブルックス氏も、「この映画はとてもスマートで、おもしろい。もし予算があるなら、この映画はとてもよい投資になると思う」と、投資家などへのアピールも忘れない。撮影終了後に、ミンクオフ氏はメル・ブルックス氏にアドバイスを求めた。ミンクオフ氏は、「アニメーションをずっとやり続けなさい」と助言をもらった、というエピソードを語った。
11月5日には、2016年公開予定の映画「Check Point(チェック・ポイント)」の記者会見が開催された。プロデューサーのニコ・ヴォン・グラソー(Niko von Glasow)氏は、同映画についてこのように話す。
「ただのアクション映画ではなく、ドメスティック・テロリズム(自国の民族に対して自国で起こるテロリズム)という誰にでも起こりうることをテーマにした」。この映画を通じて、愛する人を守るために戦うヒーローになるか、または、そこから逃げ去るか、その選択に迫られることがあるかもしれないという気づきを、作品に込めたと話す。主演女優のミンディ・ロビンソン(Mindy Robinson)氏は、学校の先生が、戦う勇士に変わっていく役を演じた。「彼女は、ヒーローになることを選んだわけ」と続けた。製作総指揮のA.J.ペレツ(A.J. Perez)氏は、試写会のリサーチ結果を報告する。
「若い人たち(18歳から24歳)がターゲットになると予測していたが、メッセージ性が強く考えさせられる部分が多いため、中上流階級の知識人たちにも受けがよかった」。AFMのメインイベントのひとつ、ワールドプレミア(世界初の作品を披露する試写会)87本と、マーケットプレミア(サンダンスなど他の映画祭では上映されたが、
ベルリンやカンヌでは披露されていない作品の試写会)242本の合計407本(30カ国語以上)も、メイン会場になったホテル周辺の映画館で開催された。