次の標的はローマ?
こうしたISのリビアにおける拠点の確立に欧米の指導者らは強く懸念している。パリのテロ事件の後に会談したオランド仏大統領とイタリアのマテオ・レンツイ首相は、リビアのISの台頭に注意を向けることで一致。首相はリビアがシリアに次ぐ新たな脅威になるとの認識を示した。
レンツイ首相が懸念するのは、ISの次の標的がローマやミラノ、バチカンなどイタリア国内ではないかと見られているからだ。実際、パリの事件後、米連邦捜査局(FBI)は5人のテロリストがローマなどでテロを起こす危険があるとイタリア当局に警告した。
イタリアのシシリー島はシルトから約600キロしか離れていない。リビア政府高官らは「ISがローマに戦闘を仕掛けようとしている」と指摘しており、ISの工作員がすでに多数、地中海を船で渡った“偽装難民”としてイタリアに入国していると見られている。彼らはスリーパー(休眠工作員)として本部のテロ指令が届くのを待っている恐れが強い。
シルトのISがリビア東部の油田地帯の拠点都市、アジュダビヤの制圧を狙っているとされるのも、テロの活動資金を確保するため石油の支配権を掌握しようとしているからだ。シリアのIS本部から送り込まれたリビアの指導者ムグヒラ・カフタニは機関誌「ダビク」最新号で、リビアの地理的地位を利用、石油を使って、欧州の治安を混乱させる、と不気味に予告している。
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