2024年7月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月21日

軍人社会へ“ノー”突き付けた民衆

 この社説の論調は、ミャンマー情勢に対する比較的公正な判断と言えるでしょう。

 今回の選挙については、実質的に軍の政党であるUSDP(連邦団結発展党)が、再度これだけの大敗を喫したことの意味をもっと考える必要があるでしょう。軍政時代に比べて民主化は進み、経済は急速に発展し、社会の自由度も高まったのに、その政権党が敗れたということになるからです。基本的に軍人が牛耳る社会に対し国民が結局、ノーを突きつけたということでしょう。それにしても軍人たちは、1990年の選挙からほとんど何も学んでいないことに驚かされます。

 例えば小選挙区制から中選挙区制に変えておけば、このような地滑り的な勝利はなかったでしょうし、候補者の選考や選挙運動のやり方を学んでおけば、もう少し善戦できたでしょう。軍側は、政権運営に疲れたという感じさえします。負けてさっぱりしているという印象を受けるのは、そういうことなのでしょう。同時にスーチーもNLDも、そういう相手に勝ったのであり、国民の意向に沿えないときは簡単に見放されることを覚悟しておくべきでしょう。

 これからスーチーと軍側との交渉が始まります。前回、軍側が政権を譲らなかった最大の理由は、NLDに参加していた反主流派の元軍人たちが、軍主流に対する報復を口にしたことが大きな理由でした。このような単純なミスは、今回は起こらないでしょうが、軍の既得権益にどこまで踏み込むのか、軍そのものはどうするのか等、難題も多く残っています。軍側も、スーチーとの関係をうまく処理しないと国際社会との関係は持ちません。社説も言うように「この挑戦が平和裡に成功するかどうかは、将軍たちの忍耐とスーチーの能力にかかっている」のです。

 現時点までのスーチーの対応を見ていると、相当現実的にやっています。かなり早くからNLDの勝利が予想され、それなりの準備をしてきた気配は見受けられます。官僚は替えないと言っていますし、軍との関係はステップ・バイ・ステップでゆっくりと対処していくとも言っています。経済の基本路線と外国投資の見直しは行なわないと言い、日本の積極的関与を望んでいます。新政権は、民主的に選ばれた政権ですから、これを助けながらうまく成功させるのが王道であり、日本の最善の選択でしょう。

   
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