2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月18日

 ミャンマーの歴史学者、タンミンウーが、11月10日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説で、総選挙後のミャンマーの課題について論じています。

Getty Images News

出発点にすぎぬ総選挙の大勝

 すなわち、11月8日に行われた総選挙の結果、アウンサンスーチーの率いる国民民主連盟(NLD)が25%の軍人枠を含めても議会の過半数を獲得できることが確実なほどの大勝を収めた。

 しかし、総選挙は出発点に過ぎない。これからミャンマーの独特な憲法に基づく解りにくいプロセスが始まる。先ず、1月に新議会が招集され、3名の副大統領を決め、その中の一人を国会が大統領に選ぶこととなる。

 アウンサンスーチー自身は大統領にはなれないが、NLDが大勝を収めたので、このプロセスを管理できる。但し、全ての権力を握ることはできない。副大統領の一人と警察・地方行政を担当する強力な内務省を含む三つの省が軍部の管理下に留まることとなっているからである。

 このような憲法の規定は民主的とは言えないが、5年前の純然たる独裁制からの移行を図る上で、軍部の核心的利益を保護するために必要な仕組みであった。今日の微妙な瞬間は、民主主義に向けての決定的な第一歩となるかもしれない。あるいは、疑似的な軍政を更に強化するだけに終わるかもしれない。

 過去数年間に亘り改革を進めて来た閣僚の何名かは議席を失った。少数民族政党も選挙では振るわなかった。スーチー女史は、国民的和解にしばしば言及してきた。国際社会はそれを支持すべきである。

 本当に困難な課題が出て来るのは政権が成立してからである。先ず、20以上に達する少数民族武装集団との間の和平プロセスがある。更に、中国との国境地帯には、数百の武装グループや犯罪組織が存在し、採鉱、木材伐採、麻薬取引に関与している。


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