米国内の韓国系銀行であるBBCNとウィルシャー銀行が12月7日、合併を発表。ともにロサンゼルスを本拠地とし、主に韓国系企業への融資などを行っている。合併とはいえ事実上はBBCNによるウィルシャーの吸収で、買取総額は10億ドルと言われる。
合併後のBBCNは総資産123億ドル、全米9州に支店を持つ、民族系としては最大の銀行となる。ただし米銀行法などに基づく認可が必要で、実際の合併は来年半ばになる予定だ。
韓国系銀行の「ビッグ4」
現在米国内では韓国系銀行の再編が急ピッチで進んでいる。もともとロサンゼルス周辺には「ビッグ4」と呼ばれる韓国系銀行があった。ハンミ銀行、ウィルシャー銀行、ナラ銀行、現在のBBCNだ。2000年の時点で、これら4銀行が米政府のプログラムであるスモール・ビジネス・アドミニストレーション(SBA=中小企業に対する政府保障型融資プラン)で融資を行った総額は、ロサンゼルス郡内に限るとバンク・オブ・アメリカを上回っていた。
SBAプログラムにより中小企業への融資ノウハウを得た韓国系銀行はその後も成長を続け、カリフォルニア州の外にも市場を求め始めた。増加する韓国系住民、韓国系企業の米上陸などが銀行の拡張を後押しした。
SBAが実施されていた1995年から99年の成長を見ると、韓国系銀行が全体で22.8%の伸びを見せたのに対し、米の主要銀行全体は18.3%、中国系銀行は11.7%だった。
4銀行は州外の小規模な韓国系銀行との吸収合併を繰り返すことで成長を続けた。トップのBBCNを見ると、2011年の総資産額52億ドルが15年には76億ドルにまで膨らんだ。15年現在、ロサンゼルス周辺には7つの韓国系銀行があるが、いずれも成長を続けている。
ここに来てライバル同士だったBBCNとウィルシャーが合併することで、3位につけるハンミにとっては非常に不利な展開となる。ハンミもまたBBCNとの合併を画策していたが、ウィルシャーが選ばれたことで今後はより規模の小さい銀行との複数合併により対抗することが考えられる。
ちなみに日系銀行を見ると、最大のものは東京三菱系のユニオン銀行で、カリフォルニア、オレゴン、ワシントンの西部にリテイルバンキングを展開。ただしユニオン銀行は民族系というよりは米銀行に区分され、投資、商業、法人など様々なサービスを提供、全米7州に広がる。総資産は1143億ドルだ。
ライバルとなるのは中国系銀行
韓国系銀行はまだ米国人相手のビジネスには成長していない。しかし逆に考えると韓国系住民だけを相手にしても着々と成長が続けられる、という凄みがある。ライバルとなるのは中国系銀行だ。中国系は住民総数が多いだけに規模は韓国系よりも大きい。しかし中国企業の進出は韓国系に比べればまだまだで、今後数年の成長は韓国系が上回ることになる。
韓国系銀行の米国内での合併が注目されるのは、それだけ韓国系住民の経済パワーが無視できないものになっているためだ。今後も続きそうな大幅再編、合併により、韓国系銀行がユニオン銀行のように米銀行と認められ、米国人顧客や企業を相手に銀行業務を展開する日はそう遠くないかもしれない。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。