2022年12月8日(木)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2016年1月4日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部 教授

東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所調査本部長、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

恩恵を受ける先進国も成長率高まらず

 もっとも、恩恵を受けているからと言って、先進国の経済成長率が大きく高まるとは見込みにくい。原油安が進む現状では、世界最大の産油国アメリカの経済けん引力も限定的である。また、ドル高は家計の購買力を高めて消費を支えるが、原油安との組み合わせでのドル高ではアメリカ企業の収益はなかなか伸びず(図表2)、経済成長が高まることにもなりにくい。

 ユーロ圏経済では、財政健全化が制約要因となる。とりわけ、中核をなすドイツ経済が健全財政を堅持しており、大きな経常黒字や家計の消費余力があっても域内経済回復の機関車役を果たしそうにない(図表3)。

 日本経済も底堅く回復するも、ほどほどの成長しか期待できそうにない。原油安、通貨安、低金利のトリプル安の恩恵等があるものの、少子高齢化で国内市場は大きくならず、国内生産の停滞と海外現地生産の拡大も止まらない。

 新興国経済の成長率が落ちる一方で先進国経済の成長率が大して高まらなければ、世界経済の成長率は高まらない。なにより、恩恵を受ける国々が入れ替わる世界経済の下では、新興国・資源途上国隆盛で縮小方向にあった世界の人々の経済格差が再び拡大に転じかねない。

打開策はイノベーションの加速

 しかし、時間はかかるものの、打開策はある。それは、久々のトリプル安の恩恵を生かして先進国が大きなイノベーションを生み出し、世界経済を活性化させることである。

 日本経済も同じ立場にある。トリプル安に支えられても、現在の日本経済には元気がない。大きな背景は少子高齢化にあるが、史上最高の収益を挙げながらも企業に投資や雇用賃金を増やす動機を乏しくしている不透明な経済動向も要因として挙げられる。企業のイノベーション力が高まれば、企業の先行きへの不透明感も減じることとなる。

 もちろん、いくらイノベーションが生まれればと言っても、大きなイノベーションは容易には生まれないし、産業革命クラスのイノベーションとなれば起きるか起きないかすら分からない。

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