2024年11月22日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2016年1月4日

 2015年の世界経済は、中国経済減速や資源安での新興国経済停滞などがあり、元気のない中で終わろうとしている。アメリカ経済だけが一人勝ちの構図だが、雇用改善で消費堅調といったプラス要因に混じってドル高といったマイナス要因もあり、さらに成長率を高めるようには見えない。2016年の世界経済も、現在と同じような要因が続いて方向感に乏しい展開となろう。

 だが、2016年の内外経済を見るに当たっては、背景にある世界経済の潮流変化を見逃すことはできない。シェール革命下のアメリカ経済と構造調整で減速する中国経済が原油安資源安とドル高をもたらしていることで、世界経済は今までの高成長する中国、原油高資源高と新興国経済の隆盛とは違った局面に入っている。

 この新たな局面は、いままで恩恵を受けてきた国々と恩恵が乏しかった国々が入れ替わる局面とも言える。それは、恩恵を享受できなくなった新興国や資源国から、新たに恩恵を受ける非資源国とりわけ先進国への主役交代でもある。

 今後の世界経済では、けん引役としての期待が先進国に一層強くかかることとなろう。その上で、少子高齢化が進み、潜在成長率が落ちている先進国が真に世界経済を牽引するには、大きなイノベーションの可能性を増すことしかない。

入れ替わった世界経済のけん引役

 世界経済の大きな変化は、所得水準別に国々の一人当たり経済成長率を見ると分かる(図表1)。かつて、世界経済は先進国が名実ともにけん引していた。そして、1980年代まで、中低所得国では人口増に成長が十分には追い付かず、一人当たりの経済成長率が先進国以下の時代が続いた。

 しかし、90年代になると、アジア諸国などが高成長を実現し、中所得国が大きな成長を遂げる時代に入る。2000年以降は、中国経済の高成長や原油・資源高などにけん引されて、低所得国が大きな成長を果たす番となった。

 現在は、これら中低所得国経済が大きな転機を迎えている。中国経済の減速や原油・資源安で今後恩恵が乏しくなる国々は多くの中低所得国が属する資源国であり、新興国である。

 一方、現在新たに恩恵を受けている国は原油・資源安とドル高がプラスに効く非資源国であり、とりわけ輸出力を持つ先進国などである。また、日米欧諸国での低金利も景気回復を支える。アメリカや日本では、それに加えて労働需給ひっ迫が賃金上昇圧力となって消費を支えることにもなる。


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