高福祉国家からの転換で未知の領域に
サウジが油価の大幅下落を警鐘ととらえ、これを機に大胆な経済改革を実施しようとしている、との分析です。
この改革への動きの責任者はサルマン副皇太子です。大胆な経済改革といっても、教育、医療が無料、水、電気、ガソリンなどの生活必需品が極めて安価、そのうえ所得税など主要な税がないという、これまでサウジが有り余る石油収入に頼って実施してきた超福祉政策が続けられなくなるということです。世界の先進国経済から見れば、サウジ経済がようやく正常なものに近づくと言っていいのでしょう。
ただ、サウジにとっては、これは未知の領域に入ることを意味します。これまでサウジ王室は、国民に超福祉政策を実施することで、国民の自由を厳しく制限しながらも王室に対する国民の忠誠を得てきました。大胆な経済改革でそのような政策が続けられなくなり、国民に新たな負担を求めることになると、国民の王政に対する忠誠心にも影響を与えざるを得ないでしょう。
国民がどのような反応を示すか予断は許しませんが、今までより「ものを言う」ようになることは間違いありません。それが解説記事の言うように政治参加を求めることになれば、サウジの統治形態の基本的変化につながりかねません。
サルマン副皇太子が推進しようとしている改革は経済的には理に適ったことであっても、サウジの政治、社会に与える影響は予測しがたく、これまで安定を看板にしてきたサウジの政治、社会体制が不安定化する可能性も排除できません。
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