2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2016年1月13日

イラク戦争時の再現

 ISは11月のパリ同時テロ事件後、米、英、仏軍、並びにロシア軍が空爆を強化したため大規模な攻勢に出ることはできなくなり、地下壕に隠れたり、ラッカなどの都市部の住宅に移動して住民を盾にして立てこもることが多くなった。しかしこのところ、イラク北西部の同国第2の水力発電所のあるハディサを包囲し、連日攻撃を仕掛けるなど余力の残っているところを見せている。

 こうした中、オバマ政権は昨年末からイラクとシリアで特殊部隊によるIS幹部の暗殺・拉致作戦の強化に乗り出した。特殊部隊は現在、シリアに反体制派の支援や偵察などのために約50人が駐留。イラクでも第1陣として200人が投入され始めているが、その任務は「価値の高い個人や標的を狙う」(国防総省当局者)というものだ。

 米軍のイラク占領中の2007年当時、米軍と激戦を展開したアルカイダ系テロ組織を壊滅するため、特殊部隊が急襲を繰り広げた作戦と同じようなことが想定されているようだ。

 米軍がこうした作戦に期待しているのは、昨年5月16日の「デルタ・フォース」によるシリア東部のIS幹部アブ・サヤフへの襲撃。同幹部はISの秘密資金を仕切っていた経理マンでこの襲撃で殺害された。しかし襲撃の際に押収したパソコンや携帯電話などからISに関する貴重な情報が多数入手され、米側にとって大きな収穫となった。

 しかし一方で、10月のイラク北部のクルド人捕虜救出作戦では、特殊部隊の1人が戦死しており、リスクも高い。特殊部隊の投入はオバマ政権にとっては両刃の剣ともなる懸念もある。

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著者:池内 恵/髙岡 豊/マイケル・シン

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