田部康喜のTV読本

2016年1月16日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

分断されるドイツ

 ドイツにおいて、いまや過去の移民と難民を加えると計1600万になり、全体の2割を占めるまでになっている。

 代表のバッハーマンは、大越のインタビューに答えて、EUの状況を次のように表現する。

 「EUはスープに例えられる。加盟国のアイデンティティ(自己同一性)を失ったごった煮状態である。おなかはいっぱいになるが、誰にとってもおいしいものではない」

 「ペギータ」の支持者が、近所のホテルが難民を受け入れる施設となることに反対しようと、公園で親子連れに支持を訴える。

 妻と子を連れた男性は、大声をあげて反論する。

 「難民は被害者であり、受け入れるべきだ。そんな考えならペギータにいってしまえ!」

 EUの寛容性は失われている。ドイツ国民は分断されている。

 地政学者のドミニク・モイジは次のようにいう。

 「メルケルは正しい。しかしリスクを負った。今後、難民をコントロールしながら受け入れていかなければならないだろう。テロと難民を意図的に結びつけるのは、ポピュリストだ」

 政治学者のクラウス・レゲヴィーはいう。

 「欧州は裂け目が生じている。自分の国のなかにこもろうとしている。EUの統合は危機を迎えている」

欧州の分断利用を目論むロシア

 第2回は、前回のEUの分断の危機に乗じる形で、ロシアが大国を目指している様が描かれている。

 ドキュメンタリーは、プーチンに近い実業家であるコンスタンチン・マロフェーエフに迫る。彼は不動産や株式などで富を築いたビジネスマンである。

 ロシアによるクリミアの実行支配の作戦において、マロフェーエフが資金などの援助をしていた事実が指摘される。大越のインタビューに対して、彼は「あくまでも人道支援だ」といって譲らない。

 しかし、ウクライナ政府が公開した、クリミア作戦を行ったふたりの軍人と彼の電話内容から、クリミア占領にあたって、多数の死傷者をだしたという報告に対して、彼は「祝日にすべきだな」と語っているのである。

 欧州の分断の動きをプーチン政権は、EUとNATOに対抗する手段として利用しようとしている。

 かつて内戦によって20万人が犠牲となった、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府は、EUとNATOに加盟する方向性を表明しているが、プーチンはそのセルビア人の自治地域に標準を絞っている。セルビア地区の指導者は「独立を問う投票を」とあおっている。ロシアも経済支援をしている。

 プーチンに近いマロフェーエフと、フランスの極右政党の国民連合の幹部と会談する場面を、カメラは追っている。国民連合に対して、マロフェーエフはおととし11億円の支援をしたといわれている。

 国民連合の幹部は、米国一極支配に対抗するために「ロシアをもっと見習うべきだ」と言い切る。

今回のNHKスペシャルは、「時空を超えて、映像を織りなすテレビのドキュメンタリーの秀作である。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る