NHKスペシャル「シリーズ 激動の世界」は、米国の一極支配が崩れた先に見える未来を描いている。第1回「テロと難民~EU共同体の分断~」(1月10日)、第2回「大国復活の野望~プーチンの賭け~」(1月11日)の放映を経て、第3回「揺れる“超大国”アメリカはどこへ」(1月16日放送予定)に至る。
解説能力を日々高めるテレビ
大越健介キャスターをメインに据えて、各国の国際政治学者に対するインタビューと最新と過去の映像を組み合わせた、ドキュメンタリーは優れた解説番組である。「テレビは速報に、新聞は解説に優れたメディアである」という評価はすでに過去のものとなったばかりか、テレビはその解説能力を日々高めている。
新聞の部数が減少傾向をたどっている大きな理由として、インターネットの普及があげられるが、テレビの報道能力の向上もまたとりあげられなければならない。朝刊を手にとって既視感がある理由でもある。
「激動の世界」は、まず第1回の冒頭において、世界のトップの象徴的な言葉をフラッシュのように折り込んでいる。
「我々は世界の警察官ではない」(オバマ・米大統領)
「新しい秩序か、あるいはルールなき世界か」(プーチン・ロシア大統領)
「我々は歴史的な試練に立っている」(メルケル・独首相)
国境をなくして、自由な往来によって、豊かな社会を築いていこうという、欧州の理念が揺らいでいる。パリの同時多発テロによって、難民の受け入れに積極的な国は、ドイツのみといってよい状況になった。
ハンガリーはドイツとの国境に、高さ4メートル、延長175キロのフェンスを築きつつある。
ドイツに入っている難民は1日約1万人、昨年は100万人を超えたと推定される。第2次世界大戦後、最も多い難民を受け入れている。
旧東ドイツのドレスデンのルポルタージュでは、極右勢力とされる「ペギーダ」に肉薄する。これまでは、低賃金や失業した人々の支持が中心だったのが、中間層にもその支持が広がっている。支持者は2万5000人、インターネットで賛意を表明している人は20万人とされる。
代表のルッツ・バッハマンが一昨年に設立した。彼は広告代理店を経営するビジネスマンである。
難民の受け入れに融和的なメルケル首相の退陣を訴える。