2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2016年1月23日

子どもたちから夢の発表

 秋山先生の講義が終わった後は、子どもたちが自分の夢に向き合う時間。配布された夢シートに将来の夢やそのためにできること、やってみたいこと、今得意なことなどを記入する。秋山選手はシートに自分の夢を書き込む子どもの机を回りながら、声を掛けていく。「夢っていうと難しいけど、自分のやりたいことを書いてみたらいいよ。どういう風に上手くなりたいか」と。記入を終えた子どもたちがサッカー選手や生物学者などの夢を発表すると、秋山選手は、その一つ一つにコメントを返した。

子どもたちの机を回って、アドバイスをする秋山選手。目線を合わせ、子どもたちの気持ちに寄り添った

 『プロサッカー選手になるために、チームで頑張る。個人練習を毎日する』と発表した子どもには、「例えば何をしたら一番いい?」と、具体的にするべき練習を『シュート練習をする』と引き出したり、「毎日っていうと、雨の日もしてる?」と質問。「野球もそうなんだけど、毎日道具に触ることで得られるものもあると思います」と子どもたちが大きな夢のために、今踏み出す一歩をどうしていけばいいか、考えるヒントを伝えた。

 「今、書いたことがこれから変わっていってもおかしくはありません。自分にあった違う道が見つかるかもしれないし。その時、新しい目標に向かっていけるかだと思います。そして、一番みんなを支えてくれているのはお父さんとお母さん。感謝の気持ちを持って、挑戦してがんばってください」と初めての授業を語り終えた。

夢がつながる夢先生

 今回、サッカーと野球が一緒に取り組むことになった夢先生だが、日本サッカー協会(JFA)の山下恵太氏は、「プロ野球と共同して実施した夢先生ですが、メディアの取り上げが思った以上にありました。参加していただいた選手も事前に準備してくれて、皆さんやる気を持って取り組んでくれたので、非常に良かったです」と話した。一方、日本プロ野球選手会(JPBPA)の加藤諭氏は、「夢先生は、 自分のことを振り返るいい機会になり、プレゼンや喋る力の確認にもなります。どの選手も子どもたちに夢について想いを持って伝えてくれましたし、選手自身のキャリアアップということも含めて、実施して非常によかったと思います。秋山選手も言っていましたが、来年度はもっと多くの選手に体験して欲しいですね」と語った。

 授業を終えた秋山選手は、「すごく緊張して入ったんですが、子どもたちが明るく迎えてくれて、自分自身いい勉強になりました。自分のことを喋ればいいんだと思っていましたが、慣れない場所で、オロオロするところもありましたが、話もよく聞いてくれましたし、ホント助かりました。先生方とは違って、スポーツ選手として伝えられることがあるのかな、と思います」と振り返った。『夢先生の今後の夢は』という質問には、「今日授業を受けてくれたみんなに野球を見に来て欲しいなと思います。移動とか大変になるので、簡単なことではないですが、それがこのプロジェクトをやった上での夢ですね」と子どもたちと交流し、広がった夢を語った。

JFAとJPBPAの取り組み初年度は、秋山選手の授業をもって終了。次年度に期待の持てる一年目となった

 教室には、クラスの目標が「自ら考え、みんなで協力。最後までやりぬく」と掲示されていた。担任の先生は、「子どもたちもいつもと違って、食い入るように見ていました。僕自身、ああいう話をしてもなかなか伝わらないところがあって、『ああまたか』みたいになってしまう。それを実際にやってきたプロアスリートが言うと重みも違いますよね。授業も秋山選手の人柄が出ていて、発表した子どもたちもよかったと話しています。本当にありがたいという気持ちです」と語った。

 子どもや先生はもちろん、選手自身にも新しい経験となる夢先生。サッカー界と野球界が一緒に取り組んでいくことで、スポーツの夢がさらに広がっていく。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツの持つ可能性が、ますます大きくなっていくように感じた一日だった。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る