2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2016年1月23日

 「夢の教室」として行われている授業をご存知だろうか。公益財団法人日本サッカー協会(JFA)が2007年からスタートさせた取り組みで、現役、OBを問わずサッカー選手をはじめとしたアスリートが、小学校、中学校を訪れ、夢先生として授業を行っている。昨年11月、日本プロ野球選手会(JPBPA)がJFAと、JFAこころのプロジェクト「夢の教室」の共同実施をする発表を行った。組織ぐるみの取り組みとしては、初めてとなるサッカー界と野球界の連携で、12月より各球団の選手が小学校を訪問。1/15には、今シーズンのラストバッターとして埼玉西武ライオンズの秋山翔吾選手が埼玉県坂戸市の上谷小学校で行われた授業に登壇した。

プロ5年目の2015年シーズン、プロ野球史上最多となるシーズン216安打を放った埼玉西武ライオンズの秋山翔吾選手が、夢先生として教壇に立った(写真提供:埼玉西武ライオンズ)

夢の教室とは

 JFAこころのプロジェクトは、JFAが2006年に子どもたちの心身の成長に寄与することを目的に立ち上げ、2007年より小学校、中学校を訪れる「夢の教室」をスタートした。スタート当時、夢先生はサッカー関係者だけだったが、「夢の教室」はサッカー教室ではなく、夢を持つ大切さを伝える場所だと、様々な競技に拡大。これまでに7800回を超える授業が実施されており、東日本大震災が起こった2011年には、日本体育協会等の4団体協働で「スポーツこころのプロジェクト~笑顔の教室」もスタートしている。

 JFAとJPBPAの契約発表の記者会見には、JFAの大仁邦彌会長も出席。人気と影響力の高いプロ野球と手を組むことで、プロジェクトの認知度が高まることはもちろん、より多くの人がスポーツの価値や意義を認識し、子どもたちの心身の健やかな成長のために、スポーツの力を最大限に生かしてプロジェクトを進めていく旨を発表している。

 今までも横浜で活躍した古木克明氏やMLBでプレーしたマック鈴木氏など野球関係者も夢先生として授業を行っていたが、組織として取り組むのは、今回が初めてとなる。2015年12月から2016年1月にかけて、全12球団から各1人がJFAこころのプロジェクトに派遣された。メンバーは、WBSCプレミア12の日本代表から増井浩俊選手(北海道日本ハムファイターズ)と秋山翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)に加え、2015年シーズン74試合に登板し、14年ぶりのセ・リーグ優勝に貢献した秋吉亮選手(東京ヤクルトスワローズ)や高卒1年目から3年連続二桁勝利を飾った藤浪晋太郎選手(阪神タイガース)ら12名である。

秋山選手改め、秋山先生

 埼玉西武ライオンズの本拠地・埼玉県の中部に位置する坂戸市の上谷(かみや)小学校の5年1組を訪れたのは、2015年、216本のヒットを放ち、シーズン最多安打を記録した秋山翔吾選手。5時間目はユニフォーム姿で体育館で一緒に汗を流す「ゲームの時間」で、6時間目はスーツに着替え、夢について語る「トークの時間」となった。

なかなか上手くいかない「だるまさんが転んだ」では、どうすればいいのか一緒に考えた。24名で手をつなぎながら、走ってゴールを目指していたが、「歩いてみたら」という児童の意見を採用し、焦らずにみんなでゴールを目指した

 授業を受けたのは5年1組の23名。たくさんの報道陣もおり、冒頭で「緊張するかもしれないけど、楽しんでいつも通り一緒にやりましょう」と語りかけた秋山選手。子どもたちの気持ちをほぐすために「秋山先生は長いので、普段は言われないのですが、アッキーと呼んでください」と授業がスタート。柔らかいボールを使ってのトスバッティングの実演から子どもたちのバッティング体験、さらにボール取りゲームやだるまさんが転んだを一緒に行った。

 「今日は失敗ってないから。チャレンジすることが成功だよ」と何度も繰り返しながら、子どもたちの笑顔を引き出した秋山先生。アシスタントがドッチボールを上に放り投げたら前進、ボールを手に持ったらストップというルールで行っただるまさんが転んだ。秋山選手も含めて横並びで24名が手をつないでいるので、なかなか全員でストップができずに一時中断。「じゃあ、どうしたら上手くいくかみんなで考えよう」と子どもたちの意見を聞きながら、進行した。

5時間目終了後に、ライオンズを現すL字を作って、全員で記念撮影。一緒に体を動かし、気持ちが伝わる授業だった

 最終的にゴールはできなかったものの、秋山選手は最後に「一人でできることとみんなでできることがあって、みんなで協力して達成することって、すごく大切なことです。できなかった時は、どうしたらやりやすくなるのか、できるようになるのかをみんなで考えて。今日は、最終的にゴールはできなかったけど、みんなで考えて、楽しくできたので、それはそれで成功だと思います」とまとめた。


新着記事

»もっと見る