2022年8月8日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月2日

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 春にはタリバンの全国的な攻勢が始まるであろう。西側がアフガン政府の救助に乗り出すことはなさそうである。タリバンの政権への復帰は――少なくとも南のタリバンの本拠地では――最早あり得ないことではない。その結果はパキスタンや中央アジアの更なる不安定化であり、ISISの拡大にとって申し分のない条件を提供する。これはロンドンやワシントンの誰も認めたがらないことであるが、何百人の命と何十億のドルを費消してなお最悪の事態はこれからだということである。

出典:Ahmed Rashid,‘While we weren't looking, the Taleban surged back in Afghanistan’(The Spectator, December 12, 2015)
http://www.spectator.co.uk/2015/12/while-we-werent-looking-the-taleban-surged-back-in-afghanistan/

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報じられぬアフガンの惨状

 筆者の言っていることは、西側の指導者がアフガニスタンの惨状を見て見ぬ振りをしている間に情勢は急激に悪化しつつあるということです。このことは殆ど報じられることがありません。報じられるのはクンドゥズ奪還作戦を支援する米軍が「国境なき医師団」が運営する病院を誤爆した時くらいのものです。この論評が書かれた後、12月下旬には、タリバンが激戦の末、ヘルマンド州の要衝サンギン地区(タリバンの資金源とされるケシ栽培の中心地でもある)をほぼ制圧したといわれます。タリバンはヘルマンド州全域を掌握した後、臨時政府の樹立を宣言するのではないかという噂もあるようです。

 オバマ大統領は米軍撤退の時刻表を、去る3月と10月の二度にわたって修正し、2016年末までに完全撤退するとの公約を反故にせざるを得なくなりました。米軍のミッションはアフガン政府軍に対する訓練、助言、支援および対テロ作戦の二つに限定されています。今後何が起ろうが、この論評が言う通り、ガニ政権の救助に米軍が乗り出すことはあり得ないでしょう。あと任期1年のオバマが現在の限定的な派遣兵力とそのミッションの変更を行うとは考えられません。去る12月、国防総省はアフガニスタンに関する対議会報告を公表しましたが、これまで通り、政府軍の梃入れによる治安情勢の安定化を言うにとどまっています。

 タリバンを制圧出来ないとなれば和平しかありませんが、筆者に和平協議再開の可能性を期待している様子はありません。和平といっても問題は山ほどあり、短期的には幾許かの成果も望み薄です。

 脅威はタリバンだけではありません。ISISが勢力を拡大しつつあるといいます。ISISは少なくとも3つの州でタリバンや政府軍と戦っているとされます。ISISの動向如何で西側の指導者が忘れられた問題に再び真剣な目を向ける時が来るでしょう。しかし、それはオバマの次の大統領になってからのことでしょう。

  
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