2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月17日

 しかし、インドネシア政府は、ISがシリアとイラク北部に繁栄している限り、ISとアジアにおけるその分派を破壊するのに困難を伴うであろう。1月12日の一般教書演説でオバマ大統領は、西側はISとの戦いに勝利しつつあると請け合ったが、その間にも、ISはナイジェリアからジャワに至るまで新たな動員に成功し、シナイ半島とリビアに領域を拡大、西側の一匹狼的ジハーディストを勇気づけている。

 ジャカルタでの攻撃は、穏健イスラム国家の政府に、彼らもISに対する戦いに利害があること、イスラム過激主義と、反ユダヤ主義と女性抑圧を含むイスラム過激主義を培養する心理に対抗する必要性があることを想起させるべきである。世界最大のイスラム国家として、伝統的に寛容なインドネシアは、それを先導するのによい位置にある。

出典:‘Islamic State in Jakarta’(Wall Street Journal, January 14, 2016)
http://www.wsj.com/articles/islamic-state-in-jakarta-1452818983

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自国内のIS排除の必要性

 ジャカルタでのISのテロは、穏健イスラム国家においてもISの実力と存在感を誇示するもので、ISにとって成果でした。しかし、同時にそれはISの弱みを示すものでもあります。ISは最近ラマディを失い、肝心のISの「本土」で劣勢に立たされています。これはISの権威にとって打撃であり、ISが世界のイスラム過激主義者にアピールし続けるためには、目に見える成果が必要です。イスタンブールやジャカルタでのテロは、ISが健在であることを示すための作戦であったと思われます。そうとすれば、これからも世界各地でISのテロが起きる可能性があります。

 社説は、今回のテロを契機に穏健イスラム国家は、ISに対する戦いに参加すべきである、と述べています。参加すると言っても、インドネシアがシリア、イラクでのISとの戦いに参加することは考えられません。これら諸国ができることは、ISが敵であることを宣言し、敵と戦うことを明言することです。そうすることでISとの戦いに参加することになるのです。

 具体的行動としては自国内でのISとの戦いです。インドネシアの対テロ特殊部隊は、地域のアルカイダ系組織ジェマ・イスラミアの細胞の除去に輝かしい記録を残しているとのことです。その組織を挙げてインドネシア内のISの活動の排除に努めるべきでしょう。それと同時に、近隣諸国、シリアからのIS分子の潜入ルートにある国々、そして米国などと情報の共有などの協力を図るべきです。

 ISが今後も、中東やアフリカの無法国家のみならず、アジアなどの法治国家でテロ行動に出れば、衝撃はそれだけ大きいでしょうが、これらの国が対IS対策を強化すれば対ISネットワークができることになります。インドネシアのような国に対するISのテロ攻撃は、ISにとって逆効果になり得ます。

  
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